基調の強さが継続する一方 潮目の変化もありえる日本市場

今週の日本株相場は基調の強さが継続するというのが僕のメインシナリオだが、一方で潮目が変わる可能性もじゅうぶんにあると考える。前週の急騰による短期的な過熱感のなか、どこまで上値を追っていけるか微妙なところだ。

前週の日本株市場は記録的な上昇となった。米国とイランの間で戦闘終結に向けた覚書合意が近いとの観測が広がると、5月7日の日経平均株価は前営業日比3,320円高の62,833円まで急伸し、史上最高値を更新した。AI・半導体関連株への資金流入が加速し、ソフトバンクグループ(9984)や半導体製造装置関連が相場をけん引した。これほど急ピッチな上昇の後だけに、テクニカル面では過熱感も強く、短期筋の利益確定売りが上値を抑える場面も想定される。

今週の焦点は地政学リスクの後退期待と国内主要企業の決算発表

今週の最大の焦点は引き続き地政学リスクの後退期待である。トランプ米大統領は14-15日に北京で習近平国家主席との首脳会談を予定している。米中首脳会談において、中国側が中東和平協議の進展を後押しする姿勢を示せば、停戦期待がさらに高まり、投資家心理の改善につながる可能性が高い。中国の王毅外相は既に、訪中したイランのアラグチ外相に対して米国との恒久停戦交渉を継続するよう促しており、中国が「地政学リスク抑制役」として機能するとの期待が市場で広がっている。

一方で、中東情勢の不透明感はなお残る。8日には米国とイランの間で再び軍事衝突が発生し、停戦期待はいったん後退した。原油価格は依然として高止まりしており、今後の交渉進展次第では原油相場・金利・株式市場が同時に大きく変動する可能性がある。現在の日本株上昇は「AI相場」と「地政学改善期待」の両輪で成り立っているだけに、外交交渉が波乱含みとなった場合の市場変動リスクには警戒が必要である。

今週は主要企業の決算発表も相場の大きな焦点となる。12日には三菱重工業(7011)、川崎重工業(7012)、古河電気工業(5801)、13日にはソフトバンクグループ、三井住友フィナンシャルグループ(8316)、15日には三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)、みずほフィナンシャルグループ(8411)、キオクシアホールディングス(285A)などの決算発表が予定されている。決算発表の目玉はキオクシアだ。日本経済新聞は「キオクシア営業利益、27年3月期市場予想「トヨタ超え」」と報じた。

注目されるのは、物色の裾野が半導体関連以外へ広がるかどうかである。これまでの相場上昇はAI・半導体関連への集中色が極めて強かったが、今後は防衛、金融、電線、自動車などへ資金循環が波及するかが重要となる。特に三菱重工業や川崎重工業など防衛関連は、中東情勢悪化を背景に業績期待が急速に高まっており、ガイダンス内容次第では相場全体のセンチメントを左右する可能性がある。

注意したいのは、AI関連や大型主力株には既に高い利益成長期待が織り込まれている点だ。市場予想をよほど大きく上回る内容でなければ出尽くし売りとなるだろう。特にソフトバンクグループやキオクシアホールディングスなど、株価上昇が急激だった銘柄については、決算後の値動きに注意が必要だろう。

日本株に影響が及ぶ可能性があるその他の要因

米国の経済指標も重要イベントとなる。12日には4月の米消費者物価指数(CPI)、14日には4月米小売売上高が発表される。原油価格高騰を背景にインフレ再加速への警戒感が強まれば、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ期待が後退し、米長期金利やドル円相場を通じて日本株にも影響が及ぶ可能性がある。

加えて、為替市場では円買い介入への警戒感が続いている。連休中には政府・日銀が4兆-5兆円規模の円買い介入を実施したとの観測が広がった。来日するベッセント米財務長官が12日、日本政府・日銀関係者と為替問題について協議するとみられる。日銀の追加利上げ観測もくすぶっており、円高方向への変動が強まれば、日本株の上値を抑える要因となろう。

基本シナリオとしては、米中首脳会談を軸とした地政学リスク後退期待を背景に強含みの展開を予想する。ただし、相場は既にかなり楽観シナリオを織り込み始めており、決算発表や外交交渉で少しでも市場期待に届かない内容が出れば、短期的な調整圧力が強まりやすい局面にある。

予想レンジは6万2000円-6万5000円とする。