2026年4月の振り返り=米ドル/円は158~160円中心の小動きが長期化

イラン危機に一喜一憂する中、なぜ米ドル/円は小動きが続いたか

4月の米ドル/円はこれまでのところ、前月中旬からの158~160円というわずか2円のレンジを中心とした小動きから抜け出せない状況が続きました(図表1参照)。株価などはイラン情勢に一喜一憂する荒い値動きが続いてきた印象がありますが、米ドル/円の小動きが続いたのはなぜでしょうか。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2026年1月~)
出所:マネックストレーダーFX

イラン危機は2月末の米国などによるイラン攻撃を受けて始まりました。この間、米ドル/円は基本的に日米の金融政策を反映する2年債利回り差と連動する状況が続いてきました(図表2参照)。この金利差はやはり米金利の影響が大きくなります。

【図表2】米ドル/円と日米2年債利回り差(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

2026年3月以降の米2年債利回りのレンジは3.48~3.99%で、最大変動幅は0.51%です。これに対して、日本の2年債利回りのレンジは1.21~1.4%なので、最大変動幅は0.19%に過ぎませんでした(図表3参照)。以上から日米金利差は、より大きく動いた米金利の影響を強く受けたと考えられます。

【図表3】日米の2年債利回りの推移(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

原油価格→米金利→日米金利差→米ドル/円=介入警戒が円安抑制

米金利は、イラン危機の中では原油価格の影響をかなり強く受ける状況になったようです(図表4参照)。イラン危機の中でもとりわけ、イランによるホルムズ海峡の封鎖を受けて原油の供給懸念が強まったことで、WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)は一時100米ドルを大きく上回る急騰となりました。そのため、米金融政策にも大きく影響する可能性が高まったのでしょう。

【図表4】米2年債利回りとWTI(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

この結果、原油価格は米ドル/円とも高い相関関係が続きました(図表5参照)。「米ドル/円≒日米金利差」、「日米金利差≒米金利」、「米金利≒原油価格」、以上のような関係から「米ドル/円≒原油価格」になったと考えられます。

【図表5】WTIと米ドル/円(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

原油価格がイラン危機に反応して、一喜一憂するのは当然でしょう。これまでみてきたように、原油価格と米ドル/円もある程度連動して動いてきました。ただしそれは、米ドル/円が原油価格に直接連動したというより、原油価格に米金利及び日米金利差が反応し、日米金利差に米ドル/円が連動したという関係が基本だったのではないでしょうか。

ここで少し細かく見ると、日米金利差及び原油価格との相関関係からすると、3月下旬~4月初めの局面では、米ドル/円は2024年7月に記録したここ数年の米ドル高・円安のピークである161.9円を更新してもおかしくありませんでした。そうならなかったのは片山財務相を中心に、日本の通貨当局が執拗に米ドル売り・円買い介入を行う可能性を示唆してけん制した影響がやはり大きかったのではないでしょうか。介入警戒から一段の米ドル高・円安が起こらなかった結果、米ドル/円は小動きが長期化したと考えられます。

2026年5月の注目点=一皮めくると円安、円高とも大荒れになるリスクも

161.9円の円安値更新なら日米協調介入か

2026年5月にかけての米ドル/円の最大の焦点は、すでに1ヶ月以上と続く、158~160円を中心としたレンジがどちらに抜けるかでしょう。小動きの長期化で溜まったエネルギーが、小動きの終わりで発散されると一方向に大きく動く可能性があります。

仮にレンジ・ブレークが米ドル高・円安方向だった場合、あっという間に2024年7月の米ドル高・円安のピーク、161.9円に近づきます。この間の日本の通貨当局者たちの発言からすると、円安値更新となるようなら米ドル売り・円買い介入が行われる可能性はありそうです。ただその場合、1月23日に行われた介入の前段階と理解されている「レートチェック」の例を参考にすると、これまでのように日本単独ではなく日米協調の米ドル売り・円買い介入が実現することもあるでしょう。

日本単独介入で円安を止められなくなっていることが確認されるようなら、一気に円暴落リスクが広がる可能性があります。ただ日米協調介入となった場合は逆に米ドル安・円高が加速すると考えられます。以上から、この間の小動きのレンジを円安方向にブレークした場合は、一転して大荒れの展開になることもあるでしょう。

投機筋の円売り拡大=損益分岐点割れなら円高へ反転の波乱要因

では、小動きのレンジを円高方向にブレークした場合はどうでしょうか。その場合は、最近にかけて拡大してきた投機筋の米ドル買い・円売りポジションの動向が鍵を握ることになるのではないでしょうか。

ヘッジファンドの取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、売り越し(米ドル買い越し)は4月21日時点で9.4万枚となり、2025年1月のトランプ政権発足以降の最高を更新しました(図表6参照)。トランプ政権下で慎重だった投機筋の米ドル買い・円売りにここに来て積極化の兆しがあります。

【図表6】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

ところで、2022年、2024年の日本当局による為替介入をきっかけとした円安から円高への急反転は、いずれも大きく拡大した投機筋の米ドル買い・円売りポジションが急縮小に向かう中で起こったものでした。ではなぜ、投機筋は円売りから円買い戻しに急転換したのか。その鍵は、円売りポジションの損益分岐点割れに伴う損失拡大の懸念だったのではないでしょうか。

投機筋の代表格であるヘッジファンドは過去半年の平均に相当する120日MA(移動平均線)を損益分岐点の目安にしている可能性があります。確かに、2022、2024年の円安から円高への急反転も、米ドル/円が120日MAを割り込む中で投機筋の円売りポジション縮小が加速し、その中で米ドル安・円高が急拡大に向かいました(図表7参照)。これは円売りポジションの損益分岐点割れにより、投機筋が円売りポジションの処分(円買い戻し)を急いだことが円高への反転の大きな原動力になったのではないでしょうか。

【図表7】米ドル/円と120日MA(2022年~)
 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

そのような米ドル/円の120日MAは足下で157円近くまで上昇してきました。この間の158~160円中心のレンジが円高方向にブレークすると、あっという間に投機筋の円売りポジションが含み益に転落するリスクが高まるのかもしれません。そしてさらに含み損が拡大する懸念が出てくるようなら、円売りポジションの処分に伴う円買い戻しが円高への反転を主導する可能性もあるのではないでしょうか。

5月にかけての米ドル/円は155~162円で予想

米ドル/円は小動きが長期化しましたが、これまでみてきたように一皮むけると円安、円高ともに大荒れになるリスクを秘めた状況が続いているのではないでしょうか。では円安、円高どちらへブレークする可能性が高いのでしょうか。それはイラン戦争を受けた原油価格の動向が鍵でしょう。

米国には「戦争60日ルール」があり、大統領は戦争が60日を過ぎた時点で、その継続に当たり議会の同意を得る必要があるようです。本音ではこの戦争から早く手を引きたいとみられるトランプ米大統領は、議会との対立が公然化する前に手打ちに動く可能性が高いのではないでしょうか。そうであれば、基本的には「原油安→米金利低下→米ドル安」という流れになりやすいため、レンジ・ブレークは円高方向となりそうです。以上を踏まえて、5月にかけての米ドル/円は155~162円で予想します。

5月第1~2週の米ドル/円は155~161円で予想

今週(4月27日週)は、日米欧などの金融政策発表予定が目白押しです。ただし、金融政策変更はまだイラン危機が継続中であることから、日米欧いずれも見送られるとの見方が基本のようです。また金曜日から5月が始まるので、イラン戦争が4月の経済指標にどのように影響したかを見極めていくことになります。日本ではゴールデンウィークの大型連休に入りますが、イラン情勢や米景気の見極めなど、引き続き予断を許さない状況が続きそうです。

以上を踏まえ、5月第1~2週の米ドル/円は、155~161円で予想します。