2026年4月8日(水)8:30発表
日本 毎月勤労統計調査2026年2月分速報
【1】結果:実質賃金は2ヶ月連続でプラスとなる前年同月比1.9%上昇
2026年2月の名目賃金は、前年同月比3.3%増と前回1月(改定値)から0.8%ポイント増となり、伸びが加速しました。同2.7%増を見込んでいた市場予想も上回り、賃金上昇のモメンタムが感じられます。基本給にあたる所定内給与が同3.3%増と伸びが加速したほか、ボーナスなどにあたる特別給与も同7.1%増と全般に強い伸びとなりました。サンプル替えの影響を除いた共通事業所ベースの所定内給与は、同3.1%増と、こちらでも賃金の伸びが確認されました。
名目賃金が再び3%台まで大きく上昇したことに加え、物価指標が2ヶ月連続で2%を割り込んだことから、実質賃金は前年同月比1.9%増と2ヶ月連続でプラスとなりました。また、ヘッドラインの消費者物価指数(総合指数)にて試算された実質賃金は同2.0%増となりました。従来、実質賃金を試算する際に用いられる消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合指数)は同1.4%上昇と伸びが減速しています。
【2】内容・注目点:2%の物価安定に向け、原油高の動向が鍵
前月に続き、実質賃金のプラスが確認される結果となりました。足元では、物価情勢が再び変わりそうな局面ではあるものの、賃金のモメンタムが確認できた点は評価できると考えています。実際に、実質賃金が2%に近い値であったのは2021年の中ごろ以来で、5年ぶりです。
また当時は新型コロナウイルスを契機としたインフレが始まる前のもので、図表2からも分かるようにデフレが実質賃金プラスに寄与していました。そのため、ようやくではありますが、適度な物価とそれを上回る賃金の伸びという健全なレジームに変わってきたとみなせます。もっとも、重要なのはこれが定着していくことであり、物価が再び3%を超える場合には、実質賃金のプラス推移を腰折れさせる懸念も残ります。
日本銀行も、直近に公表した「基調的な物価上昇率の概念と考え方」といったレビューの中で、『基調的な物価上昇率は、2%に向けて緩やかに上昇していると考えられ、今後は、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、2%程度の水準で定着するかどうかも確認していく必要がある。』としており、次のフェーズは物価の安定にあるでしょう。
目先の懸念事項は中東情勢の緊迫化による原油高ですが、執筆時点(2026年4月8日)では、米国側がイランへの攻撃を2週間停止することで合意したと伝わっています。これを受けて、NY原油先物は1バレル100ドルを割り込む水準まで低下しています(図表3)。
株式市場は、中東情勢の緊張緩和を受けてリスクオン姿勢が明確となり、同日の日経平均は2,649円高(前場引値)となり、大きく上昇しました。一方で、マクロの観点ではまだ安心できるとは言い切れないでしょう。このままホルムズ海峡が解放されるなどして、攻撃が開始される前の平時の状態に戻っていくことが期待されますが、仮に原油1バレル100ドルで推移した場合には、前年比約42%(2025年3月末71ドル→2026年3月末101ドル)の上昇となります。
1バレル100ドルが続くとは想定しがたいものの、原油が以前の水準に戻るのは時間がかかると思われ、国内のエネルギー関連の物価には上昇圧力がかかっていくでしょう。不確実性が一定程度緩和されたことは歓迎されますが、まだ不透明な部分も多く、どれくらいのスピードで平時に回帰していくかがポイントとなる局面です。
【3】所感:歓迎できる賃金モメンタムだが日銀が足元の不確実性をどう評価するか
足元の賃金指標の強さは日銀にとって歓迎できるもので、平時であれば、順当に利上げ判断へと進めたと想像できます。一定程度、不確実性が緩和されたとはいえ、金融政策の判断には難しい舵取りが求められます。個人的には追加利上げを急ぐ必要はないのではと思いますが、次回(4月27・28日)の金融政策決定会合での追加利上げも意識されるものと考えられます。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太
