2026年3月31日(火)8:30発表
日本 東京都区部消費者物価指数2026年3月分速報
【1】結果:東京コアCPIは前年同月比1.7%上昇 中東情勢の影響でガソリンは前月比16%上昇
2026年3月の東京都区部消費者物価指数(以下、東京CPI)は、ヘッドラインの総合指数が前年同月比1.4%上昇と、前回2月の同1.5%から伸びが減速しました。
コア指標である生鮮食品を除く総合指数は、前月からおおむね横ばいの同1.7%の上昇となりました。コアコアCPIと称される生鮮食品・エネルギー除く総合指数は同2.3%上昇と、0.2ポイント伸びが鈍化しました(図表1・2)
ヘッドラインの3指数のインフレ動向は特段のサプライズとはなりませんでした。一方で、直近の中東情勢の緊迫化を受けてガソリンが前月比16.0%上昇するなど、一部に懸念材料が残る内容となりました(図表3)。
【2】内容・注目点:日銀が新インフレ指標を公表 先行きも基調物価は底堅く推移する見込み
日本銀行は、3月26日に新たな物価指標として、各種制度変更などに起因する「特殊要因」を除いた消費者物価指数(CPI)を公表しました。特殊要因とは、消費税率の変更・教育無償化政策、ガソリンや電気ガス代等の負担緩和策などの影響とされています。その結果、物価の基調的な部分をより捉える指標とみなすことができ、日銀もこれに利用して市場とコミュニケーションを図るスタンスです。
新指標を確認すると、「生鮮食品、特殊要因を除いた消費者物価指数」と「生鮮食品・エネルギーを除いた消費者物価指数」の両指数は一時期よりもインフレ鈍化の傾向がうかがえます。また、「食料・エネルギーと、特殊要因を除いた消費者物価指数」が前年同月比1.7%上昇となっており、日銀のターゲットである2%を下回っています(図表4)。食料・エネルギー、特殊要因を除いた指数は2024年以来、2%をわずかに下回り横ばい圏で推移しており、額面通り評価すれば、基調部分のインフレ動向は2%のターゲットに満たないと言えるでしょう。
一方で、コロナ禍以前と比較すれば、インフレの水準自体は切り上がっており、緩やかながらも賃金などのサービス関連インフレが物価を下支えする経済に移行してきているとも言えます。そのため基調物価の観点から、次回の利上げ判断は甲乙つけがたい状況で、政策委員間でも意見が分かれるポイントと推察されます。
また、GDP統計の改定などに対応するため、需給ギャップの推計方法が見直されました。この見直しにより、従来ではマイナスで推移していた需給ギャップは上方修正されました(図表5)。
一般的に、需給ギャップがプラスで推移している局面を、インフレギャップと言い、モノやサービスの需要量が供給量を上回っている状態を指します。つまりは需要超過の状況と言えますが、足元の日本経済において需要が旺盛とは言い難く、景気に過熱感があるとは判断されないでしょう。
もっとも、マクロの観点では需要主導でのインフレ圧力が意識される局面であり、教科書通りの判断をすれば金融引き締め的な政策判断を実施していくことになります。
先行きでは春闘の賃上げ率が5%を超えて妥結される見込みが高く、2026年も基調的なインフレ部分(図表4:食料・エネルギー、特殊要因を除いた消費者物価指数)は底堅く推移すると考えています。そのことから、実際に利上げを実施しても賃金サイドを起点とした物価上昇が下支えし、基調的な物価が鈍化する見込みは小さいでしょう。
直近の金融政策決定会合(2026年3月18・19日開催分)でも、データ次第で、引き続き金融緩和の度合いを調整していくスタンスを強調しており、今回公表された各種データからも利上げを断念させる内容ではないと見なせます。筆者としては、6月または7月の利上げを予想しており、足元の不確実性をある程度確認してから利上げ判断を実施していくものと想定しています。
【3】所感:原油高が長引けば、インフレはオーバーシュートする懸念
インフレの観点で言えば、目下の心配事は原油高でしょう。米国・イスラエルによるイランへの攻撃から1ヶ月が経過し、国内のガソリン価格なども上昇が確認されています。輸入依存度の高い国内経済にとって、原油高はコロナ禍のコストプッシュインフレを想起させます。
筆者の試算では、足元の原油高水準(ブレント原油1バレル110ドル台)が続いたケースでは、向こう半年で輸入物価を16%ほど押し上げると想定され、直近の為替における円安傾向と相まってコストプッシュによるインフレ加熱が危惧されます。政府によるガソリン補助施策もあり、消費者物価への波及は一定程度低下すると考えられますが、中東情勢が長期化した際には、国内インフレがターゲットの2%にとどまらずオーバーシュートする可能性があるでしょう。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太
