米国株投資を勧めると、必ずと言っていいほど出てくる不安が「為替」です。

「米ドル円がもう少し下がったら買おうと思っている」「いまここでドルを買うのは怖い」――そう言って、投資のタイミングを先延ばしにする人は少なくありません。その気持ちはよく分かります。円安が進んだ局面ほど、「いま買うのは高値掴みでは」と感じやすいからです。

ただ、僕がこれまで多くの投資家と話してきて強く感じるのは、「為替が怖い」を理由に投資しなかった人ほど、あとで後悔しやすいということです。結局のところ、「あの時買っておけばよかった」という“たられば”になりやすい。為替を理由に見送るほど、そうなりがちです。

僕は為替の専門家ではありません。ただ一つ確信しているのは、為替は金融商品の中で最も当てにくいということです。自分の予想が外れる、というよりも、マーケットで一番それらしく聞こえる説明が、案外あっさり裏切られる。為替はそういう世界だと思います。

株式なら、乱暴に言えば「利益が伸びる企業の株は買われる」という大原則がある。外部環境で一時的に下がっても、ファンダメンタルズが崩れなければ、最終的には本来の価値に向かって戻っていきやすい。ところが為替は、金利、景気、インフレ、政策、地政学、資本移動――影響する要因があまりに多い。だから「もっともらしい解釈」が、もっとも危ないことがあるのです。

それでも、「円高になったら米国株は下がるのでは?」という疑問は当然出てきます。そこで過去データで、円建てのS&P500の成績を見てみると、意外な姿が見えてきます。

1990年以降、S&P500の半期ごとの円建てトータルリターンがマイナスになる確率は30.2%。裏返すと、約7割はプラスです。平均リターンは3%。さらに投資期間を1年に伸ばすと、プラスになる確率は74.3%まで上がります。つまり、為替リスクを恐れて投資を先送りするよりも、投資期間を伸ばすことで「マイナスになりにくい構造」に近づいていくのです。

では「どれくらい持てば、円建てでマイナスがなくなるのか」。これを調べると15年という答えになります。最悪の15年は1998年から2012年で、ドットコムバブル崩壊や金融危機を含む厳しい期間でした。それでも、その15年間S&P500を円建てで保有していた場合、リターンは28%出ています。しかもこれは“一括で黙って持つ”前提の数字です。下落局面で積立投資を辛抱強く続けていたなら、平均取得単価は下がり、結果的にリターンが上振れする余地は十分あったはずです。

僕の長い投資経験からの結論はシンプルです。長期投資をするなら、為替は気にしすぎない方が良いということです。

為替を完璧に当てにいくよりも、米国株投資をする時間を味方につける。

米国株投資をしない理由として為替を使うのではなく、為替が気になるなら「時間」と「分散」と「積立」で対処する――その方が現実的で、結果にもつながりやすいと思います。それがこれまでの長い間の経験からの結論であり、これがここから変わるとは思えないといいうのが僕の持論です。