2026年4月の中国株は米国・イランの停戦で大きく上昇

2026年3月末終値から5月8日(金)終値までの中国株は、上海総合指数が+7.4%、香港ハンセン指数が+6.5%と大幅な反発を見せています。しかし、この上昇に至るまでは極めて緊迫した局面が続いていました。

4月の序盤、中国株を含む世界の金融市場は、米国・イスラエルとイランの緊張激化という、一戦を交えかねない地政学リスクの直撃を受け、下落基調が続き、極めて不安定な状況にありました。特に原油価格の急騰は、世界的なインフレ再燃懸念を呼び起こし、FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ観測を後退させるなど、株価にとってはダブルパンチの重石となりました。香港市場でもリスクオフの売りが先行し、一時は投資家心理が凍り付く場面もありました。

しかし、4月8日に状況は一変します。米・イラン間での2週間の停戦合意、そして恒久的な講和に向けた協議の開始が発表されると、世界の株式市場の空気は劇的に改善しました。エネルギー供給の生命線であるホルムズ海峡の通航再開への期待とともに、世界のマーケットは猛烈なリリーフラリー(安堵感による反騰)を開始。香港株もこの潮流にあわせ、安値圏から力強く切り返し、テクニカル的にも重要な節目を次々と突破していきました。

製造業PMIが示す「外需」の力強い復活と政策への期待

この上昇を単なる「買い戻し」にとどめず、本格的なトレンドに向かうと期待させるのが、盤石な実体経済の裏付けです。4月の中国製造業PMIは50.3と、市場予想を上回り2ヶ月連続で拡大圏を維持しました。新規輸出受注指数が2年ぶりに50を超えたことは、世界的なエネルギー危機や物流混乱を乗り越え、中国の製造業が再び世界経済のエンジンとして機能し始めたことを示唆しています。これは「中国景気後退」というこれまでの悲観的なナラティブを打ち消す、極めてポジティブなデータと言えます。

その一方で、国家統計局が発表した非製造業PMI(サービス業・建設業)は49.4と一時的に低下しています。ただ、これは「当局による追加刺激策の呼び水」とも考えられます。製造業が自律回復を見せる中で、足元のサービス業や建設業に対してピンポイントな支援策が打ち出されれば、指数をもう一段押し上げる強力なエンジンとなるからです。

つまり、現在の香港市場は「好調な外需(輸出)」と「当局の政策期待」という二段構えの強固な支えによって、さらなる上値を追える体制が整っています。

冷戦から「ディール」の時代へ:トランプ訪中がもたらす地殻変動

そして、目下最大の期待材料となっているのが、5月に予定されているトランプ米大統領の訪中です。特筆すべきは、トランプ米大統領が米主要企業のCEOを同行し、習近平国家主席と会談するという点です。今回の訪中は単なる外交儀礼ではなく、双方の実利を重視した「ビッグ・ディール」の場になる可能性があります。トランプ米大統領は米国内のインフレ抑制のために安価な中国製品や安定したサプライチェーンを必要とし、習近平国家主席は国内景気浮揚のため、外資と輸出の拡大を求めています。この両者の利害が一致する地点こそが、一部の関税緩和に向けた具体的な合意です。

トランプ氏の政治スタイルは、イデオロギーよりも目に見える「経済的成果」を重視する傾向があり、今回のCEO同行はその本気度の表れと言えるのではないでしょうか。同行メンバーには製造業だけでなく、金融や最先端テクノロジー分野の首脳が含まれている模様です。これは中国市場における外資規制の緩和や、米中間の資本流入が再加速することを予感させる、非常に強力な布石に見えます。

4月の米国・イランの停戦という地政学的な「霧」が晴れ、続いて米中首脳が経済協力を再確認できれば、これまで中国株を過度に敬遠してきた海外資金が一気に香港市場へ流入する可能性もあるでしょう。長らくアンダーウェイトされていた香港株において、このポジティブな変化はショートポジションを抱えた投資家の「ショートスクイーズ(踏み上げ)」を誘発する可能性もあり、ハンセン指数は5月後半にかけてさらなる一段高を期待できる状況にあると思います。