二極化構造が崩れ、市場全体が冷え込む展開
2026年3月(2月末終値~3月末終値)の中国株は、上海総合指数は-6.5%、香港ハンセン指数は-6.9%と、大きな調整となっています。チャート的にも香港株式市場は、これまでの緩やかな調整局面から、明確な「下落」のフェーズに突入したといえます。
象徴的なのは、先行して弱含んでいたハンセンテック指数が、2025年10月2日の直近の高値6715.46から約30%の大幅な下落を記録したことです。1ヶ月前までは、AI(人工知能)の急速な普及が既存のソフトウェア企業の存在意義を脅かすという、いわゆる「SaaSの死」への懸念が米国から波及し、ハイテク銘柄主導の下落にとどまっていました。
しかし、米国・イスラエルによるイランへの攻撃の影響から原油価格が大きく上昇すると、ハンセン指数やH株指数もその流れに巻き込まれ、連日の出来高増加を伴う急落を見せています。これにより、かつて保たれていた「ハイテク対それ以外」という市場の二極化構造は崩れ、市場全体が冷え込む展開となりました。
産油国だが、自国分だけでは不足するジレンマ
中国は世界第4位~第6位に入るほどの産油国ですが、国内経済の規模があまりにも巨大なため、自国での産油分だけでは全く足りないというジレンマを抱えています。消費する原油の約7割を海外からの輸入に頼り、その輸入の中の4割近くを中東4ヶ国から輸入しています。今回のような中東情勢の緊迫化やホルムズ海峡の封鎖リスクには、日本と同じくらい、あるいはそれ以上に神経を尖らせているという側面もあります。
また、原油価格の上昇によりコストプッシュ型のインフレとなって、金利の高止まりや消費の低迷によるインフレ圧力が国内消費を圧迫するリスクが高まっています。第15次5ヶ年計画(2026-2030年)のスタートとなる1~2月の主要経済指標(鉱工業生産6.3%増など)は力強いスタートを切ったものの、この原油高が持続すれば、回復基調にある内需に大きな水を差すリスクがあります。
底打ちは戦況次第、しかし優良株には好機
現時点では、戦況の先行きが不透明なため、「どこが底か」を断定することは困難です。地政学リスクが続く限り、神経質な展開が続くでしょう。しかし、歴史的に見れば、総悲観は長期視点での優良株の買いタイミングであるという側面もあると思います。
また、過熱感が指摘される米国株や日本株に対し、香港ハンセン指数やH株指数のPERはかなり割安な水準にあります。テンセント(00700)のような独自の強みを持ち財務内容も良い成長株や、中国工商銀行(01398)のような高配当バリュー株の株価が下がったところは、長期視点でのチャンスになると思います。
資源エネルギー関連や電力、製薬銘柄には資金が流入
また、このような状況下でも資源エネルギー関連(中国石油天然気(以下、ペトロチャイナ:00857)、中国海洋石油(以下、クヌーク:00883)など)や、電力・製薬といったディフェンシブセクターには資金が流入している銘柄も多くあります。
前述のように消費原油の約7割を輸入に頼る中国は、国内石油を増産させ、安定供給の構築を急いでいます。このため2026年度は石油大手3社――ペトロチャイナ、クヌーク、中国石油化工(チャイナ・ペトロリアム・アンド・ケミカル:00386)の設備投資額も久々に増える見込みです。
石油だけでなく「石炭からガス」へというエネルギー転換政策により、中国のガス需要は年平均7%ペースで伸びており、原油・ガスを生産する企業にとっては追い風です。むろん、これらの銘柄は原油価格が下がれば大きく調整してしまいますので、売買のタイミングは考える必要があります。ただ、戦争が長引く(あるいは中東の状況の不安定化が続く)と予想するなら、投資を検討してみてもいいのではないでしょうか。
長期的な目線で優良株へ注視を
過去も戦争や中東情勢によって一時的に原油価格が高くなったことは多々ありました。しかし、いずれもその懸念がピークに達したところは優良銘柄の良い買い場でした。
現在の状況を見ても、米国は国内ガソリン価格が上昇し、国民の不満が高まっています。また、イラン自身も日量200万バレルもの石油を中国などへ輸出しているので、戦争で収入源が無くなるような事態(生産・物流拠点の破壊等)は避けたいはずです。
いつになるかはわかりませんが。いずれ事態は収束に向かうと見ます。長期的な目線で過度に売られた優良株に注目できると思います。
