5年MAかい離率で見ると大きく異なる「円安160円」

米ドル/円が2024年以来の160円に迫ってきた(図表1参照)。ただ同じ160円という米ドル/円の水準でも、いくつかの客観指標と比較してみると、2024年と最近ではかなり違うことになっているようだ。

【図表1】米ドル/円と5年MA(1990年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

2024年7月に161円まで上昇した米ドル/円だが、これは当時の5年MA(移動平均線)を30%程度も上回るものだった。これに対して足下の160円は、5年MAを15%程度上回るにとどまっている(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円の5年MAかい離率(1990年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

ほんの1年半で、米ドル/円と5年MAの関係がかなり変わったのは、5年MA自体が2024年7月当時の125円程度から足下では138円程度まで大きく上昇したからだ。この結果、5年MAとの関係で見ると、足下の米ドル/円160円の「上がり過ぎ」懸念は、2024年7月ほど強くなっていない。

金利差からのかい離が一段と拡大した円安

次は日米金利差との関係を見てみよう。日米10年債利回り差(米ドル優位・円劣位)は、米ドル高・円安が161円を記録した2024年7月当時は3%程度だったのに対し、足下では2%程度と約1%も縮小した(図表3参照)。

【図表3】米ドル/円と日米金利差(2020年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

2024年7月、日本の通貨当局は「ファンダメンタルズから見て行き過ぎた円安」「投機的過ぎる円安」との理由から為替市場に介入した。「ファンダメンタルズ」の目安の1つを金利差とするなら、足下の160円は2024年7月より「行き過ぎた円安」ということになるだろう。では、通貨当局は再び「行き過ぎた円安」に対して市場介入に動くだろうか。

大きく異なる投機ポジション=2024年7月「投機主導の円安」とは違う?

ヘッジファンドの取引を反映しているとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、2024年7月には過去最高規模の売り越し(米ドル買い越し)に拡大した。その意味では、通貨当局の言う「投機主導の行き過ぎた円安」を裏付けるものだったのではないか。

最近にかけて160円に接近する米ドル高・円安が再燃する中で、通貨政策の責任者である片山財務相は「投機も含めた一方的な円安を憂慮する」との発言を繰り返してきた。ただCFTC統計の投機筋の円ポジションを見る限り、円売りは2024年7月と足下では大きく異なる(図表4参照)。要するに、2024年7月に161円を記録した局面が、「投機円売り主導の行き過ぎた円安」だったとして、足下は「投機円売り主導」とは言えなさそうだ。

【図表4】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2024年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

ここまで、2024年7月に161円を記録した当時と、5年MAかい離率や日米金利差、投機ポジションなどについて最近と比較してみたが、ほんの1年半過ぎただけだが、両者にはかなり違いが目立っていた。その意味では、2024年7月に「投機主導の行き過ぎた円安」として通貨当局が為替市場介入で阻止できた状況と、最近ではかなり違っている可能性があるのではないか。