長期金利上昇、債券価格下落を止める方法とは?

日本の長期金利上昇への懸念が続いている。長期金利、10年債利回りは2%の大台が視野に入る中で、さすがにここ数日は「上げ渋る」動きとなっているものの、市場筋のコメントを見ると、この先2%を超えて上昇するとの見方も少なくないようだ。

日銀の植田総裁は12月9日、衆院予算委員会の答弁で、「やや速いスピードで上昇している」との見方を示した上で、長期金利が急激に上昇する例外的な状況では、「機動的に国債買い入れの増額などを実施する考えだ」と述べた。実質的な日銀による債券市場への介入と言えそうだが、果たしてそれで長期金利上昇、債券価格下落は止まるだろうか。

1998年「資金運用部ショック」、長期金利上昇を止めたのはゼロ金利政策

代表的な長期金利暴騰、債券価格暴落の例として知られるのは1998年の「資金運用部ショック」だろう。1998年10月に0.8%程度で推移していた10年債利回りは、1999年1月にかけて2.5%近くまで急騰した(図表1参照)。

【図表1】日10年債利回りの推移(1998~2000年)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

きっかけは、日本国債の格下げ、そして大蔵省(現財務省)資金運用部がそれまで定期的に行っていた国債買い入れを停止すると決めたことだった。そうした中で、長期金利上昇、債券価格下落は止まらなくなった。10年債利回りが2.5%以上に上昇すると、金融機関は保有している国債の含み損の急拡大により経営不安に陥りかねないとの懸念が広がった。

長期金利上昇、債券価格下落に歯止めをかけることになったのが日銀による史上初のゼロ金利政策決定だった。これにより10年債利回りの2.5%突破は回避された。そして為替相場は、ゼロ金利政策という「究極の利下げ」、それに伴う市場金利の低下に素直に反応し円高から円安へ転換したのだった(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円の推移(1998~2000年)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

長期金利がさらに上昇した場合、日銀は利上げを続けられるのか?

それにしても、代表的な日本の長期金利暴騰、債券暴落局面において、それを止める切り札になったのがゼロ金利政策という「究極の利下げ」だったことは興味深い。これを参考にすると、最近の長期金利上昇、債券価格の下落がさらに拡大した場合、日銀は利上げを続けられなくなり、それどころか「緊急利下げ」への転換に追い込まれる可能性もあるのではないか。

1998年の「資金運用部ショック」と異なり、最近は長期金利上昇の中で円安が広がってきた(図表3参照)。その上、さらなる長期金利上昇が日銀の利上げ政策転換をもたらす可能性が浮上した場合、いよいよ円安に歯止めがかからなくなる危険もあるのではないか。

【図表3】米ドル/円と日本の長期金利(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成