先週(11月3日週)の振り返り=株価急落局面で何度か152円台まで米ドル反落

日米金利差や日本の長期金利上昇で説明できない154円の円安

先週(11月3日週)の米ドル/円は153円台中心の一進一退に終始しました。先々週(10月27日週)、日米の金融政策発表をきっかけに米ドル高・円安が拡大したものの、先週(11月3日週)は米ドルの上値の重さが目立ち、何度か日米などの株価急落などをきっかけに152円台まで下落する場面もありました。ただし、株価の反発などを手掛かりに、米ドル安・円高も限られた動きにとどまりました(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2025年9月~)
出所:マネックストレーダーFX

10月末の日米の金融政策発表では、米国が次回利下げに慎重な見通しを示す一方、日銀が利上げ見送りを決めると、日米金利差(米ドル優位・円劣位)が拡大し、米ドル/円はこの間の高値を更新して154円台まで上昇しました。ただ、そもそも10月以降の米ドル高・円安は日米金利差から大きくかい離した動きです(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円と日米10年債利回り差(2025年9月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

日米金利差が縮小傾向を続ける動きを尻目に、米ドル高・円安が広がったことをある程度説明できそうだったのは日本の長期金利の上昇でした(図表3参照)。このため円売りは、日本の財政リスクを懸念した結果と考えられました。ただ、日本の長期金利上昇も、10月半ば頃からは一服感が見られます。では、そうした中でも米ドル高・円安はまだ続くのでしょうか。

【図表3】米ドル/円と日本の長期金利(2025年9月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

それまでと逆に動く傾向がある11月=ポジション調整本格化の影響か

例年、11月の米ドル/円はそれまでと逆に動く傾向があります。特に大きく米ドル高・円安へ動いた2022年以降、11月は逆に米ドル安・円高が繰り返されました(図表4参照)。この背景には、年末に向けたポジションの手仕舞い、損益確定が本格化する影響があると考えられます。

【図表4】米ドル/円の月足チャート(2022年~)
出所:マネックストレーダーFX

日米金利差の一段の拡大や日本の財政赤字懸念などから、米ドル高・円安が年内も一段と広がる見通しとなるのでしょうか。そうでなければ、少なくとも10月以降、高市新政権誕生を主な手掛かりに拡大した米ドル買い・円売りポジションの損益確定によって、米ドル売り・円買いが行われることで、例年同様にこれまでとは逆の米ドル安・円高バイアスが強まる可能性もあるのではないでしょうか。

今週(11月10日週)の注目点=株高・円安「高市相場」はどこまで反転するか

円安の反転、「上がり過ぎ」修正の株安に注目

この先、米ドル安・円高に動くとしたら、どの程度のものになるのでしょうか。その手掛かりは株価の動向だと考えられます。一時154円まで広がった米ドル高・円安は、日米金利差や日本の長期金利で説明できる範囲を超えたものでしたが、それを比較的説明できそうだったのが株価高騰だったからです(図表5参照)。

【図表5】米ドル/円と日経平均(2025年9月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

その株価は、日経平均の場合、先週(11月3日週)何度か一日で1,000~2,000円の急落が起こる場面もあるなど不安定な展開が目立ちました。この背景には、さすがに短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなった影響があったのではないでしょうか。日経平均の90日MA(移動平均線)かい離率は一時20%近くまで拡大しましたが、これは2013年5月以来の大幅なプラスかい離率でした(図表6参照)。

【図表6】日経平均の90日MAかい離率(2000年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

アベノミクス株高局面以来の「上がり過ぎ」=反動の株安に注目

2000年以降で最高のプラスかい離率を記録した2013年5月は、いわゆるアベノミクス株高の局面でした。高市新総理はまさにアベノミクスの継承、「ニュー・アベノミクス」を主張し、それを好感した形で今回株価の急騰が起こったとみられました。しかし、「ニュー・アベノミクス株高」局面では、まさに「アベノミクス株高」以来の短期的な「上がり過ぎ」が起こったのでしょう。

2013年、アベノミクス株高も、短期的な「上がり過ぎ」拡大が一段落すると、その後はその反動でさすがに一旦急落へ向かうところとなりました。最大で2割程度の株価急落が起こったのです(図表7参照)。

【図表7】日経平均の推移(2013年)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

今週(11月10日週)の米ドル/円予想レンジは150~155円

今回も日経平均がこの間の高値から2割程度の下落が起こるのであれば、4万2千円程度まで下落する計算になります。まさに、自民党総裁選での高市氏の勝利をきっかけに始まった株価急騰、「高市株高」が元の水準に戻る見通しになるわけです。そして、株価と米ドル/円の相関関係がこの先も続くなら、米ドル/円も「高市円安」が始まる前の水準、147円程度まで米ドル安・円高に戻す見通しになります。

以上を踏まえ、今週は米ドル/円の高値が限られ、株安次第では徐々に安値余地が広がる展開を想定します。今週の予想レンジは150~155円で想定したいと思います。