トランプ政権で高市氏の利上げ慎重論は修正されるか

日銀の利上げについて、1年前の自民党総裁選で有力候補の1人だった高市早苗氏は、「いま金利を上げるのはアホやと思う」と発言した。こうした影響があるのか、今回も高市氏が次期自民党総裁となった場合は、日銀の年内利上げの可能性は後退するとの見方がこれまでのところでは基本になっているようだ。

しかし、1年前の自民党総裁選後に行われた米大統領選挙で2期目のトランプ政権誕生が決まった。そのトランプ政権の経済政策においてキーマンのようになっているベッセント米財務長官率いる米財務省が6月に公表した為替報告書の中には、「日本銀行は2024年以降金融政策引き締め策を行ってきたが、それは今後も継続されるべき」との記述があった。その上で、「そういったことが、円安・米ドル高を正常化させる」との考え方も示されていた。

さらにベッセント長官自身、8月に行われたあるインタビューの中で、「インフレ対策で日銀は後手に回っているかもしれない」、「日銀は利上げすべきだと思う」などと語っていた。

以上から分かるのは、この1年で米政権からの日銀利上げを期待する姿勢がかなり強くなったということだ。そうした中で、高市氏の利上げ慎重論が果たして変わらないままでいるだろうか。

小泉内閣なら「河野財務相」はあるか?=円安是正の日米協調も

日本の金融政策、為替政策への米政権からの期待にかなり近そうな発言を行っているのは河野太郎氏だろう。報道によると、最近のインタビューの中でも「インフレの抑制には円安の是正が不可欠」だとし、政策金利の引き上げが必要だとの見解を示している。

かつて外務相、防衛相など要職も務めた河野氏は、1年前の自民党総裁選には立候補したものの、今回はこれまでのところ立候補する様子がない。しかしかつて小泉進次郎氏、石破総理との頭文字をとって「小石河連合」と呼ばれた時期もあっただけに、小泉内閣誕生となった場合、入閣、特に財務相での入閣となるようなら、早期の日銀利上げの可能性、そして円安是正での日米協調が模索される可能性もあるのではないか。

小泉陣営「加藤選挙対策本部長」の意味=高市氏or小泉氏で影響がかなり違いそう

下馬評では、高市氏とともに有力候補とされる小泉氏の日銀金融政策への考え方は今のところよく分からない。ただし1つ注目されるのは、選挙対策本部長に加藤財務相が就任したことだ。

加藤財務相は、日銀の金融政策については、「日銀が判断するべき」との原則論を繰り返している。しかし先日、ベッセント長官と過度な通貨安誘導を否定する内容の日米共同声明を発表したばかりでもある。ベッセント長官の日銀利上げへの期待に象徴されるトランプ政権の日銀利上げへの考え方を最も知っている日本の政治家の1人だろう。

その加藤氏は、選対本部長という立場だけに、仮に自民党総裁選で小泉氏が勝利し、小泉内閣誕生となった場合は、重要ポストでの処遇はほぼ確実であり、財務相を続投する可能性もあるだろう。

以上のように見ると、高市氏と小泉氏と今のところの有力候補2者では、高市氏が1年前の利上げ慎重論をどこまで修正するかが注目されるのに対し、小泉氏の場合、河野氏と加藤氏のどちらが財務相に就任した場合も、トランプ政権の早期利上げ期待や円安是正と協調する可能性があることから、金融市場への影響は大いに異なるものになるのではないか。