2024年10月にスマート農業技術活用促進法が施行
2025年はコメ価格の高騰で備蓄米の放出が話題になったが、供給不足が課題であることが明らかになった。石破首相は8月5日のコメに関する閣僚会議で「コメの増産に舵を切る」と明言。その手段として「農業経営の大規模化・法人化やスマート化の推進などを通じた生産性の向上」に言及している。コメ以外でも農業の担い手が不足しており、スマート農業がさらに注目されそうだ。
矢野経済研究所によると、2024年度のスマート農業の国内市場規模(事業者売上高ベース)は前年度比9.9%増の331億5400万円見込みとしている。施肥(肥料をまく)量の低減につながる可変施肥に対応したスマート田植え機システムや、栽培環境の変化を把握する生育マップを作成できるリモートセンシングシステムなどが普及拡大しているという。
スマート農業技術活用促進法が2024年10月に施行された。この法律は、生産現場において、人手を前提とした慣行的な生産方式からスマート農業技術に適した生産方式への転換を推進するものである。
2030年度のスマート農業の国内市場規模は788億4300万円まで拡大すると予測
2025年4月に農林水産省が発表した資料には、今後20年間で、基幹的農業従事者は現在の約4分の1(116万人→30万人)にまで減少することが見込まれ、従来の生産方式を前提とした農業生産では、農業の持続的な発展や食料の供給を確保できないとし、スマート農業技術の活用を促進することが必要であると記載されている。
2024年度版の「農業白書」の「特集3 スマート農業技術の応用と今後の展望」によると、ドローンによる農薬などの散布面積は近年急速に拡大しており、2023年度には109万7000ヘクタールになっている。また、圃場(ほじょう=農作物を栽培する場所)内を自動走行するロボットトラクターやスマホで遠隔地から水田の管理を行うことが可能なシステム、位置情報と連動することで作付け情報や営農計画などを電子化することが可能な営農管理システムなどの取り組みも進んでいる。
矢野経済研究所では2030年度のスマート農業の国内市場規模は788億4300万円まで拡大すると予測している。今後、スマート農業技術(衛星・ドローン・スマート農機・センサーなど)で圃場の生育情報を利用して各地域の収穫状況を予測し、農作物の精緻な出荷計画を作成することができることなどを想定している。
スマート農業関連銘柄
今度注目度が高まると予想される、スマート農業関連銘柄をピックアップする。
クボタ(6326)
「有人監視下での自動化・無人化」農機を既に製品化している。2024年には世界で初めて人が搭乗することなく自動運転でコメや麦の収穫作業を行えるコンバインを市場投入した。トラクター、コンバイン、田植え機の全てで無人運転仕様をラインアップしている。2026年をめどに遠隔監視における無人運転農機の実用化を目指す。
井関農機(6310)
農業機械専業で3位。トラクターや田植え機にアンテナ、モニター、電動ハンドルをつけてGPSの情報を用いる「GPS自動操舵システム」を展開している。補正情報でプラスマイナス2~3センチメートル精度の作業ができる。ICT活用の営農管理サービス「ISEKIアグリサポート」は日々の農業機械作業の情報を蓄積し、コスト低減や品質管理などを支援する。
オプティム(3694)
グループのオプティム・ファームがスマート農業を展開。オプティム・ファームは2025年5月に、茨城県・高萩市でドローンによる水稲の直接播種(種を直接田んぼなどにまく手法)を行うスマート農業実演会を実施した。同社が保有する15アールの水田で、品種「あきだわら」約6キログラムの播種を実施した。
Terra Drone(278A)
産業用ドローンで測量・点検ソリューションなどを提供している。農薬の散布作業を自動化することで労働者の負担軽減、安全性の確保、生産性の向上を可能にした。また、デジタル管理で過剰散布や不足散布を防ぎ、作業時間とコストの削減を実現した。2025年1月にインドネシアとマレーシアで2158ヘクタール(東京ドーム約460個分)の大規模パーム農園で農薬散布を実施し、オペレータが運用している。
デンソー(6902)
自動車領域で培った技術とノウハウによる「農業の工場化」に取り組む。グループ企業のセルトンとともに、欧州市場に向けて、2024年5月に房取りミニトマトの全自動収穫ロボット「Artemy(アーテミー)」の受注を開始した。セルトンはオランダに本拠を置き、世界20ヶ国以上に大規模施設園芸ソリューションを展開している。収穫箱が満杯になったら、空の収穫箱が置いてある台車まで自動で移動し、満載の箱と空の箱を自動で入れ替える。
セラク(6199)
ITインフラ構築・保守が主力である。ITで農産物生産の効率化を総合支援する「みどりクラウド」を提供し、生育環境や作業情報を計測・記録してデータ化することで、感覚に頼ってきた作業を見える化した。データをもとに判断・制御することで作物の育成や圃場の環境を最適化し、農作業の省力化、生産性の向上、作物の高品質化に貢献する。需要予測などを通じて、流通販売の支援サービスにも展開している。
