日本株騰勢の起点は7月23日

日本株相場は連日の高値追いが続いている。自民党の総裁選に絡む政局期待が足元の相場材料として意識されているが、相場の騰勢が強まったのはいつか?起点は7月23日である。この日、日経平均は1400円弱急伸し、6月30日に付けた年初来高値を抜いて約1年ぶりの高値となった。日米関税交渉の合意や石破茂首相の退陣観測報道を受け、好感した買いが優勢となった。

【グラフ1】日経平均株価の推移
出所:Bloomberg

日米関税交渉の合意と石破首相の退陣 - まさにこの二つの材料が足元の株高の根本的な背景である。

石破首相の退陣に市場は歓喜

僕が従前から批判してきた通り、石破政権は何ひとつ実績を残せなかった。関税交渉での赤沢氏の努力は認めるが、結果は他の国と同水準の関税率だ。日本だけが特別待遇を勝ち取ったわけではなく、おそらく誰が交渉しても結果は似たり寄ったりだっただろう。及第点だが、日本の国運を賭された大臣として、当然の仕事をして最低限の成果を収めたに過ぎない。しかもそれは赤沢さんの努力であって、この間、本当の日本のリーダー(であったはずの)石破首相は何をしていたか?何もしていなかったのである。

参院選後の政局の混乱が「政治空白」だと批判を招いているが、実際は石破政権誕生以来のこの1年が丸々政治空白だった。何もしない、止まっているというのは、AIの進化に代表されるこの現代において「後退している」に等しい時間の流れである。日本の社会と経済にそんな閉塞感・停滞感をもたらした政権がやっと終わる。それが参院選の与党敗北で決定的になった。それを市場は歓喜したのである。その証が1年間、更新できなかった最高値を1年ぶりに更新したことである。

日米関税交渉の合意が日本の景況感を改善

もうひとつの材料である日米関税交渉の合意が日本の景況感を改善させたこともファンダメンタルズ面の大きな材料だ。

内閣府と財務省が11日発表した7~9月期の法人企業景気予測調査によると、大企業全産業の景況判断指数(BSI)はプラス4.7と2四半期ぶりにプラスとなった。

【グラフ2】法人企業景気予測BSI(個社)
出所:財務省・内閣府発表データよりマネックス証券作成

前回4~6月期調査の大企業全産業はマイナス1.9と5四半期ぶりのマイナスだった。日米の関税合意前で製造業を中心に業績悪化の懸念があったからだ。それが7月下旬の日米関税合意で自動車関税は25%から15%に引き下がることが決まったことで不透明感が払拭され、今後は需要回復を見込む企業が増えたのだ。大企業BSIの先行きは全産業ベースで10~12月期がプラス4.3、2026年1~3月期はプラス4.7と改善が続く見通しだ。これがそのまま市場の企業業績の見方につながっている。今期は6年ぶり減益だが、来期は増益に転換するというのがアナリスト・コンセンサス。来期の業績まで見ればバリュエーションは決して高くなくじゅうぶんに買える水準だ。重要なことは米国の利下げ期待が強くても、為替が円高に振れない点だ。この背景については紙幅の関係でまた別の機会に述べたいが、米国の利下げ期待の強さや途切れないAIブームなど、内外の投資環境がこれほど良好な状況もめったにない。すべてのバランスが微妙に配材されている。

本稿を執筆しているのは12日の朝7時。シカゴの日経平均先物は4万4750円で引けている。日経平均が4万5000円の大台を越えるのも時間の問題だろう。