金利差との関係が大きく崩れた米ドル/円、ユーロ/米ドル
4月頃から米ドル/円と日米金利差(米ドル優位・円劣位)の関係が大きく崩れた。3月までの両者の関係を前提にすると、日米金利差縮小により足下では143円程度の米ドル安・円高と考えられるが、実際にはそれより米ドル高・円安水準での推移となっている(図表1参照)。
このように4月以降、金利差との関係が大きく崩れたのはユーロ/米ドルも同じである。ただし、ユーロ/米ドルと米ドル/円の違いは、3月までの金利差が示すよりも、米ドル/円は足下で米ドル高・円安になっているのに対し、ユーロ/米ドルは逆で、3月までの金利差が示すよりも足元ではユーロ高・米ドル安になっている(図表2参照)。
対米投資「金利差と無関係の米ドル買い」でも説明できず
米ドル/円もユーロ/米ドルも、金利差との関係が大きく崩れるきっかけとなったのは、4月のトランプ米大統領による相互関税発表がきっかけで起こった「関税ショック」だ。その中で米金利が上昇し、金利差米ドル優位が拡大したのを尻目に米ドルが急落する「悪い米金利上昇」が起こった。
この「悪い米金利上昇」が一段落すると、5月以降のユーロ/米ドルはある程度独米金利差に沿った動きのように見えた(図表3参照)。これに対して、米ドル/円は5月以降日米金利差の縮小傾向により米ドル安・円高への反応が鈍い状況が続き、両者のかい離はより顕著なものとなってきた(図表4参照)。
米ドル/円のように、日米金利差より米ドル高・円安圏でのかい離が広がっているのは、関税交渉などを受けた日本からの対米投資の増加をはじめ、基本的に「金利差とは無関係の米ドル買い」の影響とも考えられなくもない。
それなら、欧米間も基本的には似た構図と考えられるが、ユーロ/米ドルの独米金利差からのかい離がユーロ高・米ドル安圏で広がったことは説明できない。以上のように見ると、4月以降米ドル/円中心に広がっている金利差とのかい離は、対米投資の増加などとは違う要因の影響が大きいのだろう。
強弱順は「円<米ドル<ユーロ」=世界的株高との関係は?
これまで見てきたように、3月までの金利差との関係が示すより、足下で米ドル/円は米ドル高・円安に、そしてユーロ/米ドルはユーロ高・米ドル安になっている。こうした中では当然ながら、日独金利差とユーロ/円の関係は、米ドル/円以上に円安方向へ大きくかい離した動きが続いている(図表5参照)。
そのユーロ高・円安をある程度説明できそうなのは、5月から広がる株高の動きだ(図表6参照)。為替相場において「円<米ドル<ユーロ」の強弱関係で金利差との関係が崩れた動きが広がるという「謎」と、日米などの主要な株価指数が軒並み最高値を更新するなど株高が広がっていることと何らかの関係があるかは引き続き注目していきたい。
