モトリーフール米国本社– 2025年8月30日投稿記事より

アップル、米国内製造に1,000億ドルを追加投資へ

2025年8月初め、アップル[AAPL]のクックCEOは、トランプ米大統領や閣僚らとともにホワイトハウスで会見し、今後4年間で米国内での製造えに1,000億ドルを追加投資する計画を発表しました。これは、発表済みである5,000億ドルの米国内インフラ投資に上乗せされるものです。

アップルのインフラ投資強化は、ブロードコム[AVGO]の長期的な成長軌道に、明確な影響を与えるとみられています。アップルが米国内の事業を拡大するにつれ、ブロードコムは半導体の需要増加に加え、次世代ネットワーキング、機器接続技術、AIアプリケーションを支える新たな役割から恩恵を受けることが期待されます。

今回は、アップルのインフラ投資がなぜブロードコムの戦略的立ち位置を強化し、同社のAIを含む成長目標を加速するのかを解説していきます。

ブロードコムはハイパースケーラーと強固な関係を構築

アップルはブロードコムにとって、最も知名度が高いパートナー企業の一つですが、同社はAIハイパースケーラー各社とも深い関係を築いています。代表的な例はグーグルの親会社アルファベット[GOOGL]です。

ブロードコムの製品は、カスタム半導体、ネットワーキングスイッチ、機器を高速で接続する光インターコネクトまで幅広く、現代のデータセンターを支える基盤的な技術に及びます。こうした製品は派手さはありませんが、AIモデルの大規模学習を可能にし、データ処理を円滑に保つ「見えない足場」として機能します。こうした技術により、計算や機器間の接続がボトルネックとなって余分なコストが発生するのを防いでいます。

ブロードコムの強みは、アップルのような消費者向け電子機器(iPhone用半導体など)と、企業向けAIインフラという二つの高成長領域を橋渡しできる点にあります。さらに、ハイパースケーラー各社と確固たる関係を構築しており、専門的かつ重要な技術を提供する存在としての信頼を獲得しています。アップルからの信頼は、そのままAIエコシステム全体に対する信頼の証ともなっています。

つまり、ブロードコムは消費者向けデバイス内部のチップから、ハイパースケール・データセンター内で次世代AIを動かすインフラまで、技術スタック全体に影響力を広げているのです。

AIインフラ投資拡大の「静かな受益者」

AIワークロードの急増により、ネットワーク機器や大規模技術運用を可能にする特殊なチップの需要は高まっています。ブロードコムはこの分野で強みを持っていますが、エヌビディア[NVDA]、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ[AMD]、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)[TSM]のように脚光を浴びることはあまりありません。

その理由は、ブロードコムは注目を集める画像処理装置(GPU)を手掛けていないからです。同社はむしろ、GPU、中央演算処理装置(CPU)、メモリー半導体が効率的に接続する、「つなぎ役」としての技術に特化しています。ブロードコムの技術がなければ、生成AIの進化はデータ転送やネットワークの制約によって大幅に制限されるでしょう。

ブロードコムに投資妙味はあるのか

ブロードコムには、エヌビディアのような「AIのスター企業」として華やかさはありませんが、株価が割安というわけでもありません。むしろ逆で、本稿執筆時点でブロードコムの予想株価収益率(PER)は45倍の水準にあり、過去3年間の平均を大きく上回り、昨今のAI相場でもピークに近い水準にあります。

この割高感は、市場がブロードコムを「AIインフラ構築から構造的に利益を得る企業」としてみなしている証拠といえるでしょう。ハイパースケーラーとの関係や、アップルとの提携を通じて、自身のエコシステムを多様化し、幅広い用途で影響力を広げているのです。同社は、エヌビディアやAMDのように製品サイクルに依存せず、デジタル経済を支える技術で投資家の注目を集めています。

この静かでありながら欠かせない存在感によって、ブロードコムは、過剰な期待に振り回されることなく、AIを含む成長トレンドから安定して利益を得られるでしょう。株価は割安ではありませんが、ブロードコムはAIストーリーが展開する中で、安定したインフラ投資先として長期に保有する価値があると考えられます。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Adam Spatacco はアルファベット、アップル、エヌビディアの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアドバンスト・マイクロ・デバイセズ、アルファベット、アップル、エヌビディア、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)の株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社はブロードコムを推奨しています。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。