日経新聞を読んでいたら、「スキンプフレーション」という言葉に出会いました。恥ずかしながらこれまで知らなかったのですが、どうやら米国では2021年頃から使われ始めたskimp(倹約する、ケチる)とインフレーションの造語だそうです。

インフレ初期、日本でもポテトチップの中身が少なくなったとか、うまい棒が細くなったという「シュリンクフレーション」(価格とパッケージは据え置きでも内容量が縮小している)が随分話題となりましたが、スキンプフレーションはそれとはちょっと違います。内容量の縮小というだけでなく、内容そのものが別の安価な素材に変えられていたり、サービスの提供が絞られたりするというもので、例えばチョコレート製品は本来のココアバターの割合が減らされ、安価な植物油脂が増量されていたり、家具や木製品は無垢材から合板、プリント化粧板へ置き換えらえて質感や耐久性が大きく変わっていたりと「質の低下」を伴うケースが多いのです。

見た目や量はそのままでも、品質をグレードダウンすることで、企業は価格を据え置き、競争力を維持しようとしているということですね。狭義の「スキンプフレーション」は製品の品質低下を指すようですが、広義ではサービスの質の低下も含めて語られることも増えているようです。

例えば、ホテルのアメニティ。昔は部屋の中にブランドの化粧水などもズラリと並んでいたものですが、今は随分簡素化され最低限のものしか提供されなくなりましたね。連泊時の客室清掃の頻度も少なくなりました。これまで過剰とも思えるサービスもありましたので簡素化されることにそれほど抵抗はありませんが、繁忙期の飲食店で長く待たされるなどのサービス低下もこの言葉に含まれるようで、実際日常の中で、人手不足による弊害を感じる局面は増えてきた実感はあります。

これまでと同じ価格で、これまでと同等のサービスが受けられなくなっています。価格は上げてもいいから、これまでと同等のサービスを受けさせてくれ、という人々が増えれば企業はコストをかけてもサービスを手厚くできるのですが、実質賃金が長くマイナスである日本ではなかなか難しいのかもしれません。