トランプ復活から円買いに急変した投機筋

金利差と投機筋の為替取引の関係が、かつて経験したことがないほどの異例な状況となっている。日米金利差は一時より縮小したとはいえ、なお絶対的には大幅な円劣位が続いている。それにもかかわらず、金利差からするとかなり不利な円買いが記録的水準で大幅に拡大した状況が続いてきた(図表1参照)。

【図表1】CFTC統計の投機筋の円ポジションと日米政策金利差(2005年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

このように金利差からすると非合理的な円取引が目立つようになったのは、2024年11月の米大統領選挙を受けてトランプ政権復活の可能性が高まった頃からだった。それまでは大幅な日米金利差に沿う形で積極的な円売りが目立っていた投機筋だったが、トランプ大統領再登場の可能性が高まるとすぐに円売りに慎重となり、年が明けてトランプ政権が正式にスタートする頃からは、なお大幅な金利差円劣位にもかかわらず円買いの急拡大に向かった(図表2参照)。

【図表2】CFTC統計の投機筋の円ポジションと日米政策金利差(2023年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

金利差からは非合理的な円買いを正当化した円高

このような金利差からすると、かなり不利な円買いを正当化したのは円相場の値上がりだった。米ドル/円は1月の158円から、4月には一時139円まで米ドル安・円高となった。このような円相場の大幅な上昇は、金利差の不利を割り引いてなお投機筋の円買いに利益をもたらしたと考えられる(図表3参照)。

【図表3】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2025年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

ここまで「投機筋」という言葉を使ってきたが、この投機筋のポジションとして参考にしているCFTC(米商品先物取引委員会)統計のデータは、おもにヘッジファンドの取引を反映している。その意味では、金利差から見ると非合理的な円買い急拡大の主役は、投機筋の中でもヘッジファンドが中心である可能性が高そうだ。

その金利差からすると不利な円買いを正当化したのは、なお大幅な金利差円劣位にもかかわらず、米ドル安・円高となったことだろう。このように金利差との関係からすると不合理のようなここまでの米ドル安・円高は、日米の政治要因など、経済ファンダメンタルズ要因以外の影響を考慮する必要があるのではないか。