「米ドル離れ」はユーロ安を限定化させる=ユーロ高の主導役ではない?
ユーロ/米ドルは6月まで6ヶ月連続の陽線(ユーロ高・米ドル安)となり一気に1.2米ドルの大台が射程に入るところとなった(図表1参照)。1月には1ユーロ=1米ドルの「パリティ(等価)」割れ寸前まで下落したが、ユーロ安からユーロ高へ「豹変」したのは、トランプ大統領の政策に対する不信から米ドルの信認が揺らぎ、「米ドル離れ」が本格化したためではないかとの見方もある。
確かにそれはここまでのユーロ高・米ドル安をもたらした一因ではありそうだ。しかしユーロ高・米ドル安の主導役かといえば違うのではないか。「米ドル離れ」とは、米ドル下落リスクへの懸念から長期的に保有してきた米ドル建て資産を減らす動きだが、それは少しでも米ドルが高いうちに売るのが基本で、よほどのことがない限り、積極的に米ドルを売ることで、自らが保有する米ドル建て資産価値を急落させることはしないのではないか。その意味では、「米ドル離れ」の影響は、ユーロ安・米ドル高に戻りにくくさせるということで、ユーロ高・米ドル安をリードするものだろう。
ユーロ高主導は投機筋のユーロ買い=しかし先週、金利差に変化
ユーロ高・米ドル安のリード役は、金利差などを手掛かりとした短期売買を行う投機筋のユーロ買い・米ドル売りが基本ではないか。6月に入ってから独米金利差(米ドル優位・ユーロ劣位)は比較的大きく縮小してきた(図表2参照)。6月初めのECB(欧州中央銀行)理事会で当面の利下げ打ち止めが示唆された一方で、米利下げ再開への期待が浮上したことが基本的な背景だろう。こうした中で投機筋のユーロ買い・米ドル売りも再燃したようだ(図表3参照)。
ところが、7月3日に発表された米6月雇用統計が予想外に強い結果となったことを受けて米金利が大きく低下し、独米金利差も再拡大となった。一方でなおユーロ高・米ドル安圏での推移が続いたことから、金利差とユーロ/米ドルの関係は大きくかい離した。金利差の裏付けが変わったにもかかわらず、投機筋のユーロ買い・米ドル売りは続くだろうか。
一方向の大相場は7月「逆に」動きやすい=ポジション調整が主因か
投機筋の動きでもう1つ気になるのは、投機筋が主導して一方向に大きく動いた相場は、7月に逆に動く傾向があるということ。それは「歴史的円安」とされた2022~2024年の米ドル/円のケースが典型的だった。夏にかけて大きく円安となったものの、7月は2022~2024年にかけて3年連続で円高(米ドル陰線)となった(図表4参照)。
大きく円安が広がると、投機筋のポジションも基本的には円売りに大きく傾斜する。その円売りポジションを、夏休みに入る前、8月にかけて減らすことが、歴史的円安局面でも7月は逆の動き、つまり円高になりやすかった主な背景だったのではないか(図表5参照)。
特に2024年の場合は、7月の段階で過去最高規模に円売りポジションが膨らんでいたことから、それを減らす動きが途中から加速すると、ほんの1ヶ月弱で約20円もの米ドル/円大暴落(円高)をもたらす主役的な役割を演じてしまったのではないか。
2025年、ここまで一方向に大きく動いたのはユーロ高・米ドル安だった。そうした中で、投機筋のポジションも過去最高というほどではないものの、比較的大きくユーロ買い・米ドル売りに傾斜したようだ。
例えば、4月の「関税ショック」のように米ドル全面安が再燃するなどまだユーロ高・米ドル安が続きそうならともかく、循環的な独米金利差縮小も一巡し、さらなるユーロ高・米ドル安の可能性が低下したなら、夏休みに入る前に大きくユーロ買いに傾斜したポジションを減らす可能性があるのではないか。そうであれば、7月はユーロ高・米ドル安が「逆」に動く可能性があるだろう。
