「ダブルボトム」が形成され、上昇基調が続く可能性が高まっている

前回のコラム「【日本株】東証グロース250は2本の足で下値固まる」にて、5月の日経平均とTOPIXは、月足のチャート上では長い下ヒゲによる「2本の足」が形成され、上昇基調が続く可能性が高まった局面という話をしました。ここで重要なポイントは、TOPIXは2025年4月急落時の安値が2024年8月急落時の安値を下回らなかったという点です。2024年8月安値が2,227ポイントで、2025年4月安値は2,288ポイントでした。

相場の「ダブルボトム」の要件として、2つ目の安値が1つ目の安値を下回らないことが重要なポイントです。この場合、1つ目の安値で弱気相場が終わったという見方になります。逆に、下回ってしまうとそれは安値更新であり、弱気相場が続いていることになるからです。

東証33業種のうち、2025年4月急落時の安値が2024年8月安値を下回らなかった19業種に注目

東証33業種を見ると、すべての業種で2025年4月急落時の安値が2024年8月安値を下回らなかったわけではありません。TOPIXと同じように下回らなかったのは19業種です。一方、下回ったのは24業種でした。このような単純な分類でも、今後の優劣を判断する上での重要なヒントになり得ます。

考え方としては、下回らなかった19業種は立ち直りが早く、業種間では相対的に優位な動きになる可能性が高いと判断できます。具体的に挙げると、水産、建設、食料品、繊維、ゴム製品、機械、輸送用機器(主に自動車)、その他製品、陸運、海運、空運、倉庫、情報・通信、卸売、小売、銀行、証券、保険、不動産の19業種です。

この中でもさらに強いのは、2025年5月に年初来高値を更新した業種で、建設、食料品、機械、その他製品、空運、倉庫、情報・通信、卸売、小売の9業種に絞ることができます。この9業種は4月急落前の高値を超えたことになるため、「下に往ってこい」の動きの反動として、今度は逆に上に強い力が働くことが予想されます。

他の10業種に関しても、これから年初来高値を更新する可能性が十分にある出遅れ組の候補として有望です。ただし、主力業種である銀行と輸送用機器では動きが異なります。銀行は3月頃までは日銀による追加利上げ観測を背景に高値基調が続いたため、当時の高値までの距離がかなり大きいです。

一方、自動車株が所属する輸送用機器は円高や関税の影響で低迷した分、高値までのハードルが低い上に、200日線からの上方かい離が相対的に小さく過熱感はありません。今のところ好材料は見当たりませんが、出遅れた業種が出直りする材料として何が考えられるのかという逆算の発想をすると、答えは「円安」となります。6月以降、円安を想定できるシナリオや思考回路を持っていれば、好材料がなくても自動車株を仕込むことができます。

当面は業種間での優劣が鮮明になることが予想される

TOPIXは1年もたたないうちに、同じ水準で同じような急落から立ち直る相場展開となりました。市場参加者のほとんどがこんな値動きを経験するのは初めてでしょうし、近い将来でもめったに見られない歴史的な動きと言っても過言ではありません。それゆえに、当面は業種間での優劣が鮮明になることが予想されるため、目に見えるこの程度の分類はしておく必要があるでしょう。