現在のファンダメンタルズ:日米双方の材料で円安反転も本流は米ドル安
先週(5月26日週)のレンジと終値(マネックストレーダーFXのBidレート)
・米ドル/円: 142.114円~146.285円 144.054円
・ユーロ/米ドル:1.12104ドル~1.14188ドル 1.13470ドル
・ユーロ/円: 161.907円~164.257円 163.456円
先週(5月26日週)の米ドル/円:財務省による国債発行ヒアリングをきっかけに円安へと反転
先週(5月26日週)は週初こそ前週(5月19日週)末の流れを継続して米ドル/円は上値が重たいスタートを切り、5月27日の東京前場には142.114円の週間安値を見ることとなりました。しかし「本邦財務省が金融機関に対して国債発行額に関してのアンケートを実施した」とのニュースをきっかけに、需給が好転するとの見方から長期国債価格が上昇、株式市場は金利低下を好感して大幅高、為替市場はリスクオンの動きに朝方のショートカバーも重なって円大幅安となりました。
翌5月28日も27日の円安の動きが続きNY市場では145円台乗せ、さらに5月29日東京朝方に「米国国際貿易裁判所がトランプ関税のうち相互関税部分について差し止めた」とのニュースから仲値過ぎには一気に146.29円の高値をつけました。しかしトランプ政権はすぐに控訴、その後米控訴裁が差し止めを停止したことからNY市場では143.96円まで大きく下げた後に144円台に戻す展開に。
週末に向けては米中間協議が進展せず、トランプ米大統領が中国に対して厳しい措置を取るとしたことから、東京時間に続き143円台半ばをトライしたものの下げきれず、144円挟みで方向感が出にくい流れのままでの引けとなりました。
5月30日引け後には、トランプ米大統領がユナイテッド・ステイツ・スチール(USスチール)[X]の集会で鉄鋼・アルミ関税を6月4日から50%に倍増することを発表しました。週明け6月2日早朝の市場ではこの発表を受け、わずかにリスクオフ気味でのスタートとなっていますが、いまのところ大きな動きにはなっていません。
先週(5月26日週)のユーロ/米ドル:対米ドルの動きは米ドル/円と同様
先週(5月26日週)のユーロ/米ドルは、週前半は米ドル/円での米ドル高の動きに引っ張られてのユーロ売りという面が強かったものの、米ドル/円での円安の動きがユーロ/円でも見られたことで、値幅はそれほど広がらず、安値は「米国国際貿易裁判所がトランプ関税のうち相互関税部分について差し止めた」とのニュース直後の1.12104ドル止まりとなりました。
その後は米ドル安に転じる動きからユーロ/米ドルも上昇し5月30日朝方には1.13ドル台後半を回復後にやや押しての引けとなりました。なお、ユーロ/円は米ドル/円で円安が進行した際に164.257円まで上昇しましたが、引けは163円台半ばへと押して引けています。
米ドル/円チャート(週足)、下降トレンド継続、レジスタンスラインは有効
長期的な判断は週足で行いますので、まずは週足チャートをご覧ください。

・上昇トレンド=週足終値が移動平均線の上にある
・下降トレンド=週足終値が移動平均線の下にある
トレンド転換の判断はダマシを排除するため、2週連続で移動平均線を上回るか、下回った時にトレンドが転換したという見方をします。
週足チャートでは、20週移動平均線を下回る展開は継続中で、前回元に戻した年初来高値からのレジスタンスライン(黄色)は引き続き有効です。先週の146円台乗せではこのレジスタンスラインを一時的に上抜けたものの、148円台に乗せた時と同様で上ヒゲでのトライに終わり、実体部分の引けはレジスタンスラインの下となったので、引き続きこのラインを見ていくこととします(図表1)。
日足チャートをご覧ください。
米ドル/円チャート(日足)、5月27日にゴールデン・クロスに、トライアングルをどちらに抜けるか注目
短期的な判断は日足で行います。

・買いシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を下から上に抜くGC
・売りシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を上から下に抜くDC
日足チャートでも、週足チャートの下降ウェッジ(黄色)を引いていますが、今回新たに4月安値からのサポートラインと5月高値からのレジスタンスラインによるトライアングル(三角もちあい)のライン(青)も追加しました。現状の米ドル/円は下がれば買い、上がれば売りという動きになりやすいため、当面はこのトライアングルをどちらに抜けるかにも注目していきます(図表2)。
また短期のフィボナッチ・リトレースメントとして5月高値と5月安値による戻しの値幅観測(薄赤)を引いていますが、先週高値が61.8%戻しで止められたことから上述したトライアングルの2点目の高値としての位置を重視したことになります。
現状は5月27日に発生したゴールデン・クロス状態が続いていますが、長期的なトレンドが下降トレンドを継続していること、また日足ベースでも戻り売りと見られるパターンが出ていることから、テクニカルには次のデッド・クロスでの米ドル売りが良いのではないでしょうか。
ユーロ/米ドル、長期トレンドはユーロ買い継続パターンが強まる
ユーロ/米ドルのチャートから見ていきます。


週足チャート(図表3)は移動平均線を上回った状態を維持していること、前週の大陽線の後に先週は長い下ヒゲのパターンとなっていることから、上昇トレンドが強まってきたという判断となります。
日足チャート(図表4)では直近での2本の移動平均線の距離が近いこともあって5月29日にゴールデン・クロスが出たものの5月30日にはデッド・クロスと日替わり状態になっています。過去にもこのような短期的に方向感を失っている時もありますので、こうした時は少なくとも2日連続で同じ状態を維持できるまで待つしかありません。
また5月安値からの上昇チャンネル(青)はサポートライン側を、3月27日安値を起点とするラインへと遡らせました。ラインはなるべく長期間効いているほうが望ましく、長期的にユーロ高となっていることを考えると妥当な調整だと思います。さらに年初来高値と先週高値を結んだレジスタンスライン(黄)も追加し、当面はサポートラインとレジスタンスラインによるトライアングルを上抜けするかどうかも併せて見ていきたいと思います。
ユーロ/円は日足チャートでの判断継続、5月23日安値が重要ポイント
次にユーロ/円のチャートです。

ユーロ/円週足では移動平均線よりも上にあるためトレンド的には上昇トレンド継続中ですが、方向感が出にくい流れ自体は変わりません。引き続き週足は参考程度ということで短期的な方向性を日足で判断します。(図表5)。

日足チャートでは5月26日のゴールデン・クロス状態が続いていますので、短期的にはユーロ買いの流れにあります(図表6)。前回示した年初来安値と高値によるフィボナッチ・リトレースメント(青)の38.2%押し、4月安値と年初来高値とのフィボナッチ・リトレースメント(緑)の61.8%押しがほぼ同水準の161円台前半に位置していることから、5月23日安値は重要で、現在の上昇はここから始まった流れと言えます。
サポートラインとレジスタンスラインでトライアングル(黄)を引きましたので、サポートラインよりも上で推移していれば基本的にユーロ買いの流れが続きやすいという見方をしていてよいでしょう。さらにレジスタンスラインも上抜ける動きが出てくるようであればユーロ高の流れが定着する可能性が出てきます。ただ、現時点ではまだ米ドル/円を中心とした米ドル安の流れに戻りやすいことから、簡単にはユーロ高の動きにはならないと考えています。
それでは今週も良いトレードを!