現在のファンダメンタルズ:米国の財政赤字懸念も加わり米ドル売りが続く
先週(5月19日週)のレンジと終値(マネックストレーダーFXのBidレート)
・米ドル/円: 142.418円~145.509円 145.418円
・ユーロ/米ドル:1.11666ドル~1.13749ドル 1.13646ドル
・ユーロ/円: 161.086円~163.392円 162.028円
先週(5月19日週)の米ドル/円:G7、日米財務相会談は無風通過も円高の流れは変わらず
5月16日(金)のNY引け間際にムーディーズが米国の信用格付けをAaaからAa1へと引き下げた余波から、先週(5月19日週)はリスクオフの動きでスタートしました。5月20日には加藤財務相が「日米協議では為替についても議論する」と発言したことから、水面下で何か話が行われているのではとの思惑で円買いが強まりました。
しかしG7では日米財務相会談とも為替水準の話は出なかったとのことで買い戻しも見られたものの、中長期的な米ドル安トレンドが続いている中で、これまでと同様に買われたところですぐ売りに出されるという動きに押され、米ドル安の流れ自体には変化は見られませんでした。
そして米国が3連休を控えた5月23日の欧州市場で、トランプ米大統領がアップル[AAPL]への25%関税適用、6月からはEUへの50%関税適用との発言をしたことでダウ先物が急落、米ドル/円も142.42円レベルへと下げ、その後は安値圏でもみあいのまま週末を迎えました(その後5月26日、トランプ米大統領はEUへの関税50%発動期限を7月9日まで延長することに合意)。
先週(5月19日週)のユーロ/米ドル:対ユーロでも米ドル安の流れ
先週(5月19日週)のユーロ/米ドルは、週初はムーディーズによる米国の信用格付けの引き下げによる米ドル売り、その後も米ドル/円とともに米ドル安・ユーロ高の流れが週を通して続いた1週間となりました。
5月23日にはトランプ米大統領が6月からEUへ50%関税を課すとの発言をしたことで一時的にユーロ/米ドルが下げる動きとなりましたが引けにかけては戻す動き、一方で米ドル/円が下げたこともあり、ユーロ/円は161円目前まで下げる動きを見せました。
今週(5月26日週)は5月26日が英国、米国ともに祝日となっているため本格的な動きは27日(火)からとなりますが、現状は短期的にはトランプ米大統領の発言で振らされ、中長期的には関税問題と財政赤字問題でトリプル安が起きやすい環境が続いているという押さえでよいでしょう。
米ドル/円チャート(週足)、下降トレンド継続、レジスタンスラインを再設定
長期的な判断は週足で行いますので、まずは週足チャートをご覧ください。

・上昇トレンド=週足終値が移動平均線の上にある
・下降トレンド=週足終値が移動平均線の下にある
トレンド転換の判断はダマシを排除するため、2週連続で移動平均線を上回るか、下回った時にトレンドが転換したという見方をします。
週足チャートでは、20週移動平均線を下回る展開は継続中です。先週のコラムで年初来高値からのレジスタンスライン(黄色)を引き直したばかりですが、今週はまた以前のレジスタンスラインに戻しました。先週(5月19日週)の下げで大きな陰線が出たことに加え、日足チャートで示したフィボナッチ・リトレースメントによる値幅観測からも、週足では長い上ヒゲでレジスタンスラインを抜けられなかったと見た方が今後の分析に良さそうだと感じたためです。いずれにしても中長期的な米ドル/円の下降トレンドは続いています(図表1)。
日足チャートをご覧ください。
米ドル/円チャート(日足)、長期的には2024年9月安値139.575円を割り込んでいく流れとなるか
短期的な判断は日足で行います。

・買いシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を下から上に抜くGC
・売りシグナル=終値移動平均線が始値移動平均線を上から下に抜くDC
日足チャートでも、元のライン(黄色)に戻しましたが、このラインを上抜けしてつけた高値が3月高値と4月安値の76.4%戻しで止められたことを改めて重視することとしました。引き続き週足チャートで示したレジスタンスライン(黄色)とフィボナッチ・リトレースメントによる値幅観測による下値目処を検討していきます。現状は3月高値を起点に4月安値までの下げ、その後の5月高値への戻しを3点としたフィボナッチ・エクスパンション(緑)を下値の目処として引きました(図表2)。
これによると、61.8%エクスパンションが141.648で最初のターゲット、次が76.4%エクスパンション139.994円と140円の大台と重なります。また4月安値も139.880円となっていることから140円割れはターゲット兼サポートとなりますが、長期的に見ると、最終的には2024年9月安値139.575円を割り込んでいく流れになるのではないかとみています。
ユーロ/米ドル、長期トレンドはユーロ買い継続、調整も終了
ユーロ/米ドルのチャートから見ていきます。

週足チャート(図表3)は移動平均線を上回った状態を維持していますが、4月高値からの調整局面は大陽線が出たことで終了した可能性が高まりました。

日足チャート(図表4)でもこの高値からの短期下降チャンネル(黄色)の中での下げを上抜け短期的には5月安値からの上昇チャンネル(青)へと流れが変わってきました。フィボナッチ・リトレースメントでは年初来安値と年初来高値を起点としたもの(黒)、3月下旬安値と4月高値を起点としたもの(青)のどちらも1.10台半ばにあり同水準で下げ止まったことも大きいと言えるでしょう。
2本の移動平均線も先週執筆時点にゴールデン・クロス発生の可能性を書きましたが、やはり19日終値でゴールデン・クロスとなり本日までその状態が続いています。当面は米ドル安の流れの中でユーロ高の動きが続きやすい展開となってきました。
ユーロ/円:日足は2本の移動平均線が近く、今週初はダマシが出やすくなるため注意が必要
次にユーロ/円のチャートです。

ユーロ/円週足では移動平均線よりも上にあるためトレンド的には上昇トレンド継続中ではあるものの先週(5月19日週)の下げで移動平均線にかなり近づいてきました。方向感が出にくい流れは変わりませんので、当面週足は無視して短期的な方向性を日足で判断します。(図表5)。

日足チャートでは5月22日に1日だけゴールデン・クロスのダマシを挟んで23日に改めてデッド・クロスが発生しています(図表6)。フィボナッチ・リトレースメントによるターゲットは年初来安値と高値によるフィボナッチ・リトレースメント(青)に加え、4月安値と年初来高値とのフィボナッチ・リトレースメント(緑)も追加しました。
それぞれのターゲットを見ると青の38.2%押しと緑の61.8%がほぼ同水準で161円台前半に位置しています。先週の安値が同水準で下げ止まったこと、2本の移動平均線がかなり近いことから今週初はダマシが出やすくなるため注意が必要です。
全体的な米ドル売りが出てくる場合、ユーロ/米ドルより米ドル/円での下げが大きくなりやすいため、ユーロ/円では下げるバイアスがかかりやすくなります。引き続き注意するとしたら下方向であることに変わりはありません。
それでは今週も良いトレードを!