2025年4月30日(水)21:30発表(日本時間)
米国 GDP 2024年1-3月期 速報値

2025年4月30日(水)23:00発表(日本時間) 
米国 PCE価格指数 2025年3月分

【1】結果:実質GDP成長率はマイナスへ転落も個人消費は底堅さを維持

2025年4月30日に公表された2025年1-3月期の米国実質GDP速報値は、前期比年率換算で0.3%減と、前回2024年10-12月期の2.4%増から大きく減速しマイナス圏に転落、また、市場予想の0.2%減を下回りました。一方、GDPの約7割を占める個人消費は1.8%増となり、前回の4.0%増は下回ったものの、市場予想の1.2%増は上回り、底堅さを示しました。

また、同日に公表されたPCE価格指数は、総合・コアともに前回から低下し、インフレ鈍化を示す内容となりました。

■米実質GDP(1-3月期速報値)(前期比年率)
結果 -0.3% 予想 -0.2% 
前回 2.4%

■個人消費
結果 1.8% 予想 1.2%
前回 4.0%

■PCE価格指数(2025年3月分)
結果 2.3% 予想 2.2%
前回 2.7%(2.5%から上方修正)

■PCEコア価格指数(2025年3月分)
結果 2.6% 予想 2.6%
前回 3.0%(2.8%から上方修正)

【図表1】米国実質GDP前期比年率換算の推移
出所:米商務省経済分析局よりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:GDP統計は、関税前の駆け込み需要で輸入が下押しするも民間最終需要は良好

実質GDP成長率、低調が続いていた住宅投資に底打ちの兆し

【図表2】実質GDP成長率と各項目寄与度
出所:米商務省経済分析局よりマネックス証券作成

2025年1-3月期の米国実質GDP成長率はマイナスに転じました。主因は、トランプ政権による関税導入を前に「駆け込み輸入」が急増したことによるもので、輸入の急拡大がGDPを-5.03%ポイント押し下げました。加えて、政府支出も-0.25%ポイントの下押し要因となり、いずれも政策的要因が今期の成長率に大きく影響しました。

一方、GDPの約7割を占める個人消費支出は前期比年率+1.8%と底堅さを維持しました。前期の同4.0 %増に比べると減速感がありますが、前期は年末商戦の影響で大きく上振れしていたこともあり、反動減を考慮すれば、堅調な水準を維持していると言えます。内訳を見ると、財・サービスのいずれもプラスを維持しており、特にサービスは+2.4%と好調で、引き続き米経済のけん引役となっています。

民間投資も堅調で、企業の非住宅投資は+9.8%、中でも設備機器投資は+22.5%と、前期の-8.7%から大きく回復しました。

住宅投資も+1.3%と2四半期連続で増加しました。前期(+5.5%)からは増加幅が縮小したものの、2024年4-9月期にマイナスが続いていたことを踏まえれば、依然として住宅ローン金利が高止まりする中でもプラスを維持しており、低調が続いていた住宅投資に底打ちの兆しがみられます。

そのほか、民間在庫は+2.25%ポイントのプラス寄与と、実質GDPを大きく押し上げました。もともと変動の大きい項目ですが、前期の大幅減少からの反動に加え、関税発動を見越した在庫の積み増しや、サプライチェーン不安に対する備えが影響したとみられます。

こうした政策の影響で純輸出や在庫が大きく変動しているため、今回のGDP統計は読み取りが難しくなっています。そこで、こうした外生的要因を除いた基調的な需要動向を確認するため、個人消費・住宅投資・設備投資を合計した「民間国内最終需要」に注目すると、前期比年率+3.0%と、前期の+2.9%から拡大しており、米国の民間需要の底堅さが改めて確認されました。

3月のPCE価格指数は、前月から低下しインフレ鈍化の進展を示唆

一方で、堅調な需要に伴うインフレ圧力への懸念もありますが、GDP発表と同日に公表された3月のPCE価格指数は、前月から低下しインフレ鈍化の進展を示しました。総合指数は前年比+2.3%(前月+2.7%)、コア指数は同+2.6%(前月+3.0%)と、いずれも前年同月比で伸びが低下しました。前月比では、総合・コアともに0.0%と横ばいで、足元の物価上昇スピードの落ち着きが確認されました。

こうしたインフレ鈍化の進展を受けて、市場では6月の利下げ実施への期待が高まりつつあります。

【図表3】PCE価格指数の推移
出所:米商務省経済分析局よりマネックス証券作成

【3】所感:マイナス成長も民間需要は底堅さを維持、リセッション回避の鍵は個人消費に

2025年1-3月期の米国GDP統計では、駆け込み輸入の急増や政府支出の削減といった政策要因の影響を受け、実質GDP成長率はマイナスに転じました。ただし、民間需要は底堅さを示しており、見出しの数値が示すほど内容は悪くないと評価できます。

もっとも、今後の成長率は関税政策の行方に大きく左右されると言え、不確実性はなお残ります。今回大きく伸びた民間投資には反動減の懸念があるほか、4月に発動された相互関税も上乗せ分が90日間延期されたことから駆け込み需要が続き、輸入が2四半期連続で成長率を押し下げる可能性があります。

このような「輸入増+政府支出減」による成長率の落ち込みは、2022年1-3月期の状況と類似しています。ただし当時も、個人消費と民間投資が底堅さを維持していたことから、リセッションとは判定されませんでした。

今回も同様に、今後の株式市場の行方を左右するのは、米国の実体経済がリセッションに陥るかどうかであり、その鍵を握るのは個人消費を中心とした民間需要です。今後も、関税政策の動向を注視しつつ、毎月の小売売上高や個人消費支出(PCE)などを通じて、足元の需要動向を慎重に見極めていく必要があります。

フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐