就任1ヶ月、怒涛の展開の日々
トランプ大統領が就任してから1ヶ月が経過しました。毎日のように新しい展開が待ち受けている、あっという間の1ヶ月でした。
米国と貿易上の取引のある国・地域のすべてに関税を発動するという、物騒な政策を打ち出して世界経済は戦々恐々としています。それでも2期目の政策運営は、1期目の時と比べてはるかにスムーズに進んでいます。大統領選挙の期間中から政策スタッフが就任後の政策を練り上げてきたのでしょう。
2月21日付の日本経済新聞には米ワシントン・ポストの記事が紹介され、それによればトランプ大統領が公約に掲げた31の項目のうち、すでに16の分野が着手されているそうです。そのうちのひとつ「米連邦議会襲撃事件で罪を問われた人への恩赦」は早くも達成されました。
トランプ大統領が就任の日からこれまでに署名した大統領令は111本にのぼり、就任1ヶ月間で出した大統領令としては、第2次世界大戦後では最多です。
第1次トランプ政権の時は、最初の1ヶ月で署名した大統領令は30本でしたから、今回はその3倍のスピードで政策が前に進められています。
トランプ大統領が政策の遂行を急ぐ理由
トランプ大統領がこれほどまでに政策の遂行を急ぐのは、2026年に実施される中間選挙を意識しているとの見方が根強く存在します。
中間選挙までに確固たる実績を挙げ、有権者に成果をアピールする意向が見てとれます。何と言っても今回の大統領選で共和党は、大統領職と議会の上下院をすべて押さえる「トリプル・レッド」を獲得しました。現状では議会運営と法案の審議をきわめて有利に進められます。
この有利な立ち位置を維持すべく、2026年の中間選挙でもさらに勝利を確実なものにしようと有権者にアピールしやすい政策を優先していると見られます。
日本をはじめ米国と貿易を行う国・地域に対する25%の関税をはじめ、ウクライナ和平交渉など、世界中が警戒しており先行きの見通しを立てるのが難しい状況です。それでも多数を握る上下院と自身に忠実な閣僚・部下で固めたトランプ政権は迷うことなく、選挙公約を1つずつ実現させようと急いでいます。
トランプ政権の政策に沿う銘柄をピックアップ
不透明な側面も多々ありますが、現在のトランプ政権の政策構想に沿った銘柄をピックアップしてみようと思います。
荏原製作所(6361)
ポンプの総合メーカー。ポンプは気体の産業ガス、液体の溶液、薬剤を送り込む重要パーツとして企業の設備投資計画には不可欠である。半導体や液晶の製造工程でも多用され、LNG掘削、運搬、貯蔵基地でも欠かせないパーツである。また半導体・シリコンウエハーの研磨装置でも世界トップクラスの実力を誇る。日米首脳会談では将来的に米国アラスカ産LNGの大規模な購入計画が約束された。今後の掘削プランでも重要な役割を果たしそうだ。
コマツ(小松製作所)(6301)
米キャタピラー[CAT]に次いで建設機械では世界第2位の実力。地理的に近いアジアで高いシェアを有する。早くから自社の鉱山、建設機械に高レベルの情報技術を組み込み、運転の自動化、無人化、遠隔操作、メンテナンスの省力化を推進。ウクライナ和平交渉がどのような進展を見せるか予測は難しいが、中東地域も含めて都市の機能再建に、建設機械需要は数年にわたって高まると予想される。
スズキ(7269)
軽自動車では国内トップクラスであり、世界でも抜きんでた存在の同社。主力車種は「スペーシア」「ワゴンR」「アルト」のいずれも軽自動車。収益の大半をインド市場で稼ぎ出す。インドへの進出は早く(1982年にインド国営企業と合弁会社を設立)、現在もインドの乗用車シェアの5割強を握る。2月20日に2030年度までの新中期経営計画を発表したばかりで、最終年度には売上高8.0兆円(現在5.4兆円)、営業利益8000億円(現在4650億円)を目指す。米国での売上はゼロに等しく、トランプ関税の影響も小さい。
積水ハウス(1928)
日本を代表する住宅メーカー。高級戸建て住宅、賃貸住宅、マンションに強く、最近では特に環境に配慮した戸建て住宅「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」に積極的に取り組んでいる。収益環境は好調で、最近発表された第3四半期も最高益を更新。けん引役は米国での住宅市場で、いまや売上高の3割、営業利益の2割は米国市場で稼いでいる。トランプ政権の政策綱領には「住宅建設費と新規購入費の引き下げ」が盛り込まれており、政策金利の引き下げとも相まって米国の住宅市場への期待も再び高まりつつある。