モトリーフール米国本社– 2025年3月2日 投稿記事より
マイクロソフトにより量子コンピューターの商業化が近づき、革命を起こす可能性
大手テクノロジー企業から、次々とイノベーションが生まれています。メタ・プラットフォームズ[META]のハンド・コントロール式拡張現実メガネ(ARグラス)、アルファベット[GOOGL]による自動運転車の商業化、アマゾン・ドットコム[AMZN]のロボット制御倉庫など、これらの企業は競争相手に対する技術的優位性を高め続けており、将来の成長基盤を築いています。
マイクロソフト[MSFT]の発表は、最近の発表の中で最も注目されているかもしれません。それは、画期的な量子コンピューティング・チップ「Majorana (マヨラナ)1」に関するものです。この技術面のブレイクスルーは、マイクロソフトの材料科学における大きな進展により可能となり、世界の量子コンピューティングの商業化を一歩前進させるものとなります。また、これはクラウド・コンピューティング市場に革命を起こす可能性があります。
クラウド・コンピューティングの未来
科学的な詳細を除き、マイクロソフトのマヨラナ1量子コンピューティング・チップについて簡単に説明します。従来の量子コンピューターの構築方法はシステムが非常に不安定で、研究目的以外に使用されることはないと考えられていました。
しかし、マイクロソフトはトポコンダクターと呼ばれる新しい種類の材料(固体、液体、気体でもないトポロジカル状態を作り出すことが可能な材料)を発明し、この問題を解決することができると考えています。これにより、量子コンピューティング・チップの処理能力を大きくスケールアップしつつ、動作の安定性を維持することが可能になります。最終的には、量子コンピューティングを一般に普及させることができるかもしれません。
トランジスタが従来のコンピューター市場の成長をもたらしたように、マイクロソフトのこの課題解決は量子コンピューター市場における成長の一歩となる可能性があります。
なぜこれが、それほど素晴らしいことなのでしょうか。それは、処理能力がスケールアップされた量子コンピューターが非常に強力だからです。わずか数ビットの量子ビット(キュービット)でも、従来のコンピューターが数年かかるような非常に複雑な問題を解くことができます。このことは、特にクラウド・コンピューティング市場において、コンピューティング・コストを大幅に削減し、人工知能(AI)や自動運転車などの技術をさらに成長させる可能性があります。
商業化の準備が整っていない驚異的な技術
世界中で最新のデジタル・ツールを導入する際、最大のボトルネックの1つは、コンピューティング・コストです。新しいAIツールを運用するには、データセンターへの莫大な支出が必要であり、従来のクラウド・コンピューティング、動画配信、最新スマートフォンなども同様です。マイクロソフトだけでも、2025年のAI関連設備投資に800億ドルを費やす予定ですが、AI分野の多くのプレーヤーの1社にすぎません。今後数年間で、特に中国を含めると、ハイテク分野全体でデータセンターに累計で数兆ドルが費やされる可能性があります。
だからこそ、量子コンピューターは非常に価値があると言えるのです。量子コンピューターにより、コンピューティングのコスト効率が大幅に向上します。開発者は高度なAIツールを数十億もの人々に提供し、従来のコンピューターでは時間がかかる最先端のバイオテクノロジーやシミュレーション問題に取り組むことができ、これらの新しい技術を使用してさらに多くのことが成し遂げられる可能性があります。これは間違いなく素晴らしいことです。
しかし、量子コンピューター商業化のタイミングについては、冷静に見る必要があります。このマヨラナ1チップは初期段階にすぎず、商業化までの道のりは遠い状態です。マイクロソフトは量子コンピューター普及までの時間を短縮したと考えていますが、技術が本格的に実用化されるまでには数年、場合によっては数十年かかるでしょう。短期的なマイクロソフトの事業展開にとって重要なのは、AI関連の設備投資支出であり、それが事業のさらなる成長につながるかどうかです。
現状のマイクロソフトは割安か
この最近の発表とAIに対する期待の高まりにもかかわらず、本稿執筆時点では、マイクロソフトの株価は実際に15%下落しており、過去10年間で最悪の状況とも言えるでしょう。この下落は、サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)が、AIデータセンターの供給過剰が迫っていると宣言したことが原因である可能性が高いと思われます。ナデラCEOは、マヨラナ 1チップを初めて披露した際のインタビューで、そのように述べました。
この下落を受けて、マイクロソフトの株価は現在、過去12ヶ月の実績株価収益率(PER)が32倍となっています。これはS&P 500指数の30倍を上回っていますが、このハイテクの巨人にとっては「割安」といえるかもしれません。マイクロソフトの売上高は前年同期比12%増と成長しています。営業利益はさらに速く成長しており、前四半期では同17%増を記録しました。マイクロソフトのクラウド・コンピューティング部門が潜在的なAI関連収益をすべて取り込むことができれば、この成長は今後も続くと考えられます。実現すれば、マイクロソフトのPERは今後数年間で急速に低下するでしょう。マイクロソフトの将来を楽観視するのであれば、今が同社の株へ投資する良いタイミングと言えるかもしれません。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。John Mackeyはアマゾン・ドット・コムの子会社Whole Foods Marketの元最高経営責任者(CEO)であり、モトリーフール米国本社取締役会メンバーです。フェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)の元市場開発担当ダイレクターおよび広報担当であり、メタ・プラットフォームズの Mark Zuckerberg CEOの姉であるRandi Zuckerberg は、モトリーフール米国本社取締役会メンバーです。アルファベットの役員であるSuzanne Freyはモトリーフール米国本社取締役会メンバーです。元記事の著者Brett Schafer はアルファベット、アマゾン・ドット・コムの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、マイクロソフトの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は、次のオプションを推奨しています。マイクロソフト2026年1月限月395ドル・コールオプションのロング、マイクロソフト2026年1月限月405ドル・コールオプションのショート。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。