モトリーフール米国本社 - 2025年1月21日 投稿記事より

モデルナ[MRNA]、事業の立て直しの行方

モデルナはコロナワクチンの売上減少を受けて事業の立て直しを図っているため、投資家がこのバイオテクノロジー企業の近い将来の方向性について考えるのは自然なことでしょう。

2028年初頭までには、モデルナは確実に次の事業フェーズに入り、プラットフォームの価値や医薬品開発における総合的な能力について証明することが必要な新進気鋭のバイオテクノロジー企業ではなく、むしろ伝統的な製薬企業のように事業を展開している可能性があります。

問題は、そのフェーズが、足元のフェーズよりも良いものになるかどうかということになります。同社が何に取り組んでいるのか、そして、その取り組みが投資家に与える財務的な影響を探ってみましょう。

モデルナは次の事業フェーズへ、インフルエンザとコロナの混合注射ワクチンと7つのがん治療薬

モデルナがどこに向かっているのかについて議論を始める前に、業績や事業予想をみておきましょう。モデルナは今後3年間、売上高や利益で過去最高水準を更新することはないとみられます。なぜなら、コロナワクチンのような特異なゴールドラッシュ(需要の集中)が再び起こる可能性は限りなくゼロに近いからです。

モデルナ経営陣の今後3年にわたる計画では、「合計10の新製品を発売し、2027年には研究開発への年間投資額を11億ドル削減する」としています。

現在、モデルナの直近12ヶ月間の売上高は50億ドル強で、27億ドルの営業損失を計上しています。つまり、資金繰りが厳しくなっているまさにそのときにこそ、需要のある医薬品を製造しなければならないというプレッシャーがかかっていることになります。

承認される可能性があり、最も大きな収益が見込める製品は、インフルエンザとコロナの混合注射、インフルエンザワクチン、次世代コロナワクチンです。適切な条件が整えば、こうしたプログラムはそれぞれ年間10億ドルを超える売上高を生み出すブロックバスター(大ヒット)医薬品になる可能性があります。しかし、株主が恩恵を受ける方法は売上高だけではないことを認識することは重要です。

例えば、米保健福祉省(HHS)は1月17日、モデルナのパンデミック・インフルエンザ・ワクチン・プログラム(新型インフルエンザ対策)を推進するために5億9,000万ドルを同社に助成すると発表しました。このプログラムは今年後半に後期試験に入る可能性があります。こうした助成金を今後さらに獲得する可能性は高く、その結果、感染症のパイプライン・プログラムの追加開始や推進に伴うリスクがいくらか軽減されることになります。

これとは別に、ややニッチな用途のモデルナの医薬品は、承認前でも株価を押し上げる可能性があるとみられます。

特に、中期から後期の臨床試験段階にある同社の7つのがん治療薬、特に個別化新抗原療法(INT)のうちの6つは、その作用メカニズムにおいて注目されています。INTは、患者の腫瘍細胞の遺伝子配列を利用して免疫系を訓練し、特に他の抗がん剤の助けを借りて、より効果的にがんと闘うようにするものです。

これらの医薬品のバージョン1.0は、対象となるがん領域の市場規模が比較的小さいため、すぐに大きな収益にはつながらないとしても、がん治療における大きな進歩となる可能性があります。それでも、モデルナがいずれかの候補薬の商業化に成功すれば、開発をやめてしまう可能性はゼロではありません。

そのため、もしバイオテクノロジー企業がこうしたプログラムのひとつを成功させることができ、その進捗状況について後期段階のアップデートが得られれば、その将来にとって素晴らしい兆候となるでしょう。

時間軸が長ければ長いほど投資妙味がある可能性

モデルナは、次の大きな成長に向けて2028年初頭になる頃には準備を整えている可能性が高いものの、現在からその間に新たに立ち上げたプログラムによる成長の多くが実現するのはその後になるでしょう。

したがって、モデルナに投資するのであれば、少なくとも5年以上は保有する覚悟を持ち、今日、あるいは今後数四半期以内に株を買わなければならないような差し迫った期限はないことを認識しておく必要があります。

同時に、臨床プログラムのいずれかが市場価値のある医薬品を生み出すことに失敗する可能性があり、そのような失敗は株価にダメージを与えることに注意する必要があります。同じセグメント内で複数の失敗があれば、ダメージは簡単に倍増します。

モデルナは、先進的な治療用ワクチンがその潜在能力を発揮すれば、おそらくかなりの期間、バイオファーマ業界の重要な一角を担うでしょう。今後3年以内にそうした仮定を証明する必要がありますが、今のところ順調に進んでいると考えられます。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Alex Carchidiは、記載されているどの銘柄の株式も保有していません。モトリーフール米国本社は、モデルナを推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。