2024年もあと1ヶ月ほどとなりました。これからNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用したい人、すでに利用している人が年内に押さえておきたいポイントをまとめました。
NISA:非課税枠の利用、受渡日が基準
年末ぎりぎりに買っても間に合わない
以前、「年内に非課税枠を使おうと思ったら、年末最終営業日までに購入すれば間に合いますか」という質問をいただきました。答えはNoです。
NISAの非課税枠の利用については、約定日ではなく受渡日が基準となります。たとえ約定日が年内であったとしても、受渡日が翌年になる取引の場合は、年内の非課税枠を利用した取引ではなく、翌年の非課税枠を利用した取引となってしまうので、注意が必要です。
国内株式と外国株式、投資信託でも、国内株式に投資をする投資信託と、海外の株式に投資する投資信託では受渡日は異なります。12月にNISA口座で取引をする場合には、受渡日を確認しましょう。
年内に売っても翌年の非課税投資枠がふえるわけではない
「年内に売って、翌年の非課税枠を増やそう」と考える方もいるかもしれません。翌年利用できるのはあくまで年間の非課税投資枠(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)の範囲内。今年売った枠を上乗せして翌年利用できるわけではありません。
そういう意味では、NISAの非課税保有限度額(総枠)1800万円を埋めるまでは、枠の復活はさほど気にする必要はないでしょう。そもそも、NISAは資産形成を応援する制度です。非課税保有限度額の上限に達するまでは、投資方針に沿って淡々と投資を続け、必要な特に解約する、ということでよいのではないでしょうか。
金融機関を変更する場合
2025年から利用するNISA口座の変更手続きは、10月1日から受付が始まっています。変更を希望する場合は、まず現在NISA口座を利用している金融機関から、必要書類(「非課税口座廃止通知書」または「勘定廃止通知書」)をお取り寄せください。
例えば、A証券からB証券にNISA口座を変更したい場合に必要な書類は下記となります。
・A証券のNISA口座を廃止し、B証券のNISA口座を開設する場合には「非課税口座廃止通知書」
・A証券のNISA口座はそのまま残し、B証券にNISA口座を開設する場合には「勘定廃止通知書」
必要書類を取り寄せた上で、新たに利用したい金融機関に申し込みを行います。2025年1月から利用したい場合には、書類受入や手続き等の締切日を確認しましょう。
【iDeCo】2024年12月加入時の変更点と年末調整・確定申告の注意点
会社員と公務員:2024年12月からiDeCoに加入しやすくなる
これまでiDeCoに加入するには、勤務先の担当部署から「事業主の証明書」をもらい、それを運営管理機関に提出する必要がありました。2024年12月から事業主証明書が不要となります(掛金を給与天引きで払う場合には引き続き必要です)。実施主体である国民年金基金連合会が、毎月、企業年金の加入状況を確認できるようになるためです。
従来、勤務先が協力的でない、時間がかかる、面倒といった声もありましたが、そうしたことは解消されます。企業年金のない会社員や勤務先の退職給付がそれほど手厚くない、という人はこの機会にiDeCoへの加入を検討してはいかがでしょうか。
確定給付企業年金などがある会社員と公務員:掛金を増額する場合には届出を
2024年12月(2025年1月引き落とし分から) DB(確定給付企業年金)等に加入する会社員や公務員はiDeCoの拠出限度額が1万2000円から最大2万円に変わります。
正確には「月額5万5,000円から各月の企業型DCの事業主掛金やDBなどの他制度掛金相当額を差し引いた金額」となるので、会社の拠出額である「各月の企業型DCの事業主掛金額」や「DBなど他制度掛金相当額」の合計額が月額3万5,000円を超えると、拠出限度額は2万円よりも減っていく仕組みです。
上限の引き上げに伴い、毎月の掛金額をふやしたい人は「加入者掛金額変 更届」を提出しましょう。ただ、iDeCoは課税の繰り延べをする制度なので、受取り時は原則課税となります。一時金で受け取ると退職所得控除、分割で受け取ると公的年金等控除の適用はありますがが、一定額を超えると課税されます。
勤務先の退職給付(退職一時金や企業年金)が手厚い会社員は、非課税投資枠が拡充されたNISAを優先的に活用する、という選択肢もあります。
年末調整や確定申告を忘れずに
iDeCoの掛金を銀行口座から振替で払っている人は、国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」がハガキで送付されていると思います(令和5年度以降、控除証明書はマイナポータルからも取得できるようになっています)。
iDeCoの掛金は所得控除のうちのひとつ、「小規模企業共済等掛金控除」の対象です。そのため、会社員・公務員の場合は年末調整で税金が還付されます。iDeCoは掛金が給与天引きの場合には手続きは不要ですが、掛金が銀行口座からの振替(個人払込)の場合は年末調整の手続きが必要です(自分で確定申告してもよい)。
年末調整の用紙の「小規模企業共済等掛金控除」欄にある「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」のところに2024年中に支払った掛金の総額を記入して提出しましょう。
自営業の方は確定申告を行う際、「確定申告書第一表」の左下にある「小規模企業共済等掛金控除⑭」の右側の空欄に「小規模企業共済等掛金控除」に記載された金額(その年のiDeCoで支払った掛金の総額)を記入します。次に「確定申告書第二表」の右上に記載がある「⑭小規模企業共済等掛金控除」で「保険料等の種類」欄に「個人型確定拠出年金」と記入します。なお、申告には「掛金払込証明書」の添付が必要です。
これから年末の慌ただしい時期ですが、手続きなどは忘れずに行いたいものです。