配当金の増加や自社株買いが目立った決算発表
3月決算企業の第2四半期決算発表がほぼ一巡しました。中間決算を終えたことから、いつもの年と同じように年間の業績見通しを上方(下方)修正する企業が増えています。
例年と少し異なっているのは、配当金を大幅に増やし、まとまった金額の自社株買いを発表する企業が相次いでいる点です。
無駄な現金を社内に貯め込んでいると、アクティビストに狙われやすくなります。それならば配当金を増やし自社株を消却するなど、資金の使い道をこれまで以上に工夫する企業が増えてきたように思います。
日本電気(6701)など、子会社の非上場化に向けた動きも活発に
同じように、上場している子会社を親会社がTOBによって本体に吸収し、非上場化を選択する企業も例年になく増加しています。
日本電気(6701)は通信工事を手がけているNECネッツエスアイ(1973)を、TOBによって完全子会社化すると発表しました。TOB価格は@3,250円でプレミアム(上乗せ価格)は約20%、これがうまくいけばNECネッツエスアイは上場廃止となります。
工作機械のDMG森精機(6141)も、スタンダード市場に上場する太陽工機(6164)を、TOBを通じて完全子会社化すると明らかにしました。TOB価格は@1,875円でプレミアムは3割を超えています。
子会社の上場をやめ、非上場化が相次いでいる背景にはもうひとつ、東京証券取引所が進めている上場企業への「株価や資本コストを意識した経営」の推進も影響しているとみられます。
親子関係にある企業が一緒に上場している問題点は、グループとして優秀な経営陣の数が不足したり、無駄な投資が増えて資本コストが上昇したりといった弊害が多くなることです。経営陣に対して株主が付託した「資本の効率的な運用」が妨げられるため、PBRの1倍割れ、ROEの低迷などが引き起こされる遠因にもなります。
上場企業に対しては、マネジメントの本質的な役割は親会社に一本化して、スリムでスマートな経営戦略を練り上げてもらいたいものです。上場子会社を親会社が本体に取り込んでいく流れは今後も継続することになるでしょう。そこで今回は、上場企業の子会社をいくつか取り上げてみます。
企業価値に期待できる上場企業の子会社4銘柄
日鉄ソリューションズ(2327)
日本製鉄(5401)の子会社であり、システムインテグレーターの大手。日本製鉄が筆頭株主で株式の63%強を保有する。DX(デジタルトランスフォーメーション)、クラウド、AI(人工知能)、AR(拡張現実)IoT、データ活用、アウトソーシングなど、さまざまな分野で研究開発を行い、サービスを提供している。今期も最高益を更新する見通し。
東映アニメーション(4816)
東映系のアニメ制作会社。1948年に設立された「日本動画」を東映(9605)が買収し、現在も東映が筆頭株主で株式の33.5%を保有する。厳密な意味での子会社ではないが、「ワンピース」「ドラゴンボール」「プリキュア」「ガールズバンドクライ」「美少女戦士セーラームーン」「キン肉マン」など歴代の豊富なコンテンツを有しており、企業価値はきわめて高い。
アイチ コーポレーション(6345)
高所作業車メーカーとして国内トップ。トヨタ自動車(7203)の有力グループ企業である豊田自動織機(6201)の子会社。豊田自動織機が株式の54%を保有。高所作業車は電柱などの電気工事や通信工事には不可欠で電力会社向けが多いが、ほかにも道路・信号工事、ビル・住宅・工場・鉄道などの作業現場でも多用される。高所作業車の専用メーカーとして60年以上の歴史を持ち、海外にも広く進出している。
能美防災(6744)
火災報知器の最大手。ビル用消火設備など防災機器全般を手がける。2006年にセコム(9735)の子会社となり、現在もセコムが筆頭株主。株式の50%を保有する。火災報知器の製造・販売だけでなく、施工から保守まで総合的な防災システムとして提供する。都心部を中心に大型の都市再開発がラッシュとなっており、火災報知設備の需要はきわめて高い。自治体と組んで避難所の開所・運営、避難訓練活動も活発に行う。