日銀の早期利上げ期待後退も、なぜ金利は上昇したのか

・米ドル/円は9月から10月にかけて一時139円まで下がったところから、154円近くまで大きく戻した。この動きは日米10年債利回り差とほぼ一致している。金利差が拡大したため米ドルが上がってきた。

・石破首相の発言により日銀の早期利上げ期待は後退したが、むしろ金利は長期金利も短期金利も上がった。先進国の長期金利は米国に影響される。日本の早期利上げ期待が後退しても、米国の金利が上がったから、日本の金利も上昇した。

・ではなぜ、いつから米金利は上がったのか。米金利は9月18日の FOMCの大幅利下げ頃からずっと上昇している。これはソフトランディング期待によるものである。今後、さらに米ドル高になるかは、米国の金利次第である。

2016年の「トランプ・ラリー」とは違う

・2016年大統領選では、トランプ勝利後、米金利が大幅に上昇し、金利差が拡大。1ヶ月程度で米ドルは20円近く急騰した。これは「トランプ・ラリー」と言われた。

・今回はその時とは局面が違うのではないか。むしろ近いのは、もう一つのトランプ大相場である2018年からの「悪い金利上昇」だろう。金利差の拡大を尻目にドルは急落した。トランプ減税が議会で成立し、金利はさらに上がったが、株は下がったため、米ドルは金利上昇ではなく、株安に連動した。

・CFTC(米商品先物取引委員会)による投機筋のアメリカ10年物国債のポジションを見ると、2016年11月の「トランプ・ラリー」が始まる前は、ヘッジとして安全資産が買われて買い越しとなっている。一方、ここ数年のインフレの影響もあり、現状債券は空前の売り越し状況が続いている。すでに債券を相当売っているので、ここからさらにどれだけ売られるのだろうか。

・NYダウの90日MAかい離率を見ると、「トランプ・ラリー」前はニュートラルな状況だったが、「悪い金利上昇」前は短期的にかなり株が上がり過ぎていた。大型減税が議会で成立しても、金利は上がらず、さらに株が下がったのはこの短期の上がり過ぎに修正が入ったからだろう。今回は後者の状況に近いのではないか。