2024年10月31日(木)21:30発表(日本時間)
米国 PCE
【1】 結果:総合指数は順調に鈍化もコア指数は予想上振れし高止まり 個人消費支出は底堅さを示す
総合指数(すべての品目を含む)は前年比+2.1%と、市場予想と一致し、前回の+2.3%から低下しました。前月比では+0.2%と、前月と同じ水準の伸びとなりました。
一方、食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+2.7%で、前月の+2.6%を上回りました。前月比も+0.3%と前月の結果を上回り、物価上昇ペースに加速が見られました(図表1参照)。
また、9月の米国個人消費支出は前月比+0.5%で、8月の+0.2%を上回り、18ヶ月連続で増加となりました。
【2】内容・注目点:スーパーコア指数は高止まりも再び下向く
PCE価格指数とは、GDPを算出する際に家計の財・サービスの消費金額を集計する個人消費支出(Personal Consumption Expenditures)を基に作成される物価指数です。
CPIと同様に米国の消費段階における物価動向を測定する指標ですが、PCE価格指数の方が対象品目の幅が広く、また消費者の価格変化に伴う購買行動の変化をより捉えることができるため、FRBが金融政策を決定する際にはPCE価格指数をより重視しています。インフレ目標を2%とした場合、一般的にこのPCE物価指数の数値を指しています。
CPIの方が、速報性があるため市場では注目度が高くなっていますが、より厳密にはPCE価格指数の方が重要であるといえるでしょう。
そして、今回9月のPCE価格指数(総合)は、+2.1%と前月の+2.3%を下回り、順調なインフレ鈍化の傾向を示しました。
一方で、FRB(米連邦準備制度理事会)がより重視する変動の大きいエネルギーと食品を除いたコア指数は3ヶ月連続で前年比+2.7%とやや高止まりしています(図表2参照)。
コア指数の高止まりの要因を確認するためPCEコア価格指数の内訳を見ると、耐久財(黄土色バー)はマイナス寄与している一方、サービス価格(青色バー)がコア指数の高止まりに寄与していることがわかります(図表3参照)。
また、図表4のサービス価格の内訳を見ると、住宅インフレ(灰色バー)やヘルスケア(黄土色バー)が粘着性を持っていることがわかります。
スーパーコア(前年同月比)は高止まりしつつも再び下向く
一方で、遅行性の強い住宅価格は除いて労働集約型のサービス価格を分析するため、FRB当局者は「スーパーコア」に注目していますが、この数値は9月に前年比+3.2%で、前月の+3.4%から鈍化しました。依然としてやや高止まりが意識されるものの、方向性としては再び下向き傾向であり、急上昇していくような兆候は見られませんでした(図表5参照)。
こうした中で、個人消費は底堅さを維持しており、9月の個人消費支出は前月比+0.5%増となりました。一方、個人所得は前月比+0.3%増にとどまり、個人消費支出の+0.5%を下回り、貯蓄率は4.6%と年初来の最低水準を記録しました。
なお、9月に発表された米国第2四半期実質GDP確報値では、2019年以降のGDPとGDI(国内総所得)データが改定されました。特にGDIは2021年以降の結果がほぼすべて上方修正され、その影響で貯蓄率は2024年以降のデータが大幅に引き上げられています(図表6参照)。
【3】所感:個人消費が堅調な背景とは?年内残り2回の利下げは可能か
9月のPCE価格指数では、コア指数が高止まりし、インフレ目標達成には課題が残るものの、個人消費支出は堅調で、米国の需要の強さを示しました。消費の落ち込みが想定より小さく、インフレ鈍化の進展が緩やかである背景には、貯蓄率の大幅な上方改定が考えられます。貯蓄率の上方修正は、消費者の裁量的支出余力が想定以上に残されていることを示唆しています。
消費が底堅いことは経済にとって良い兆候ですが、一方で、物価がインフレ目標を上回っている状況では早急な利下げの不要論にもつながります。年内にはあと2回の利下げが想定されていますが、1回のみとなるとの観測が高まりつつあります。消費が底堅く物価の高止まりが意識される中、金融政策の動向は労働市場の状況にかかっていると言えます。最注目の雇用統計は11月1日(金)に公表されます。
フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐