「石破発言」後も円金利は上昇=それでも円安の理由とは
石破総理が、日銀の植田総裁との会談後に「個人的には今利上げする環境にあるとは思わない」と発言したのは10月2日(水)だった。この日の米ドル/円は143円台で推移していたが、この発言後から円売りが拡大し、一気に146円台まで米ドル高・円安となった(図表1参照)。米ドル/円の値動きを振り返ると、この発言がそれまでの円高から円安再燃への大きなきっかけになったようにも見える。
この10月2日の143円台から、その後150円を大きく超えるまで米ドル高・円安に戻した動きは、基本的に日米の長期金利、10年債利回り差の変化と連動したものだった(図表2参照)。これが、石破発言を受けて日銀の早期利上げ見通しが後退し、日本の金利低下を通じた金利差円劣位拡大だったかと言えばそれは違うだろう。
「石破発言」当時、0.8%台前半で推移していた日本の10年債利回りは、最近にかけて1%近くまで上昇した。これは金融政策を反映する短期金利についても基本的に同様で、2年債利回りは0.3%台半ばから0.4%台半ばまで上昇した。日銀の利上げ見通し後退でも、日本の金利はむしろ上昇したのはなぜか。
それは米金利が上昇したからだろう。日米独など主要国の長期金利は基本的に連動する。基本は、「世界一の経済大国」である米国の長期金利変動の影響を受けると考えられる(図表3参照)。
米10年債利回りの上昇は、9月18日(水)にFOMC(米連邦公開市場委員会)が0.5%の大幅利下げを決定した後から始まった。なぜ大幅利下げを受けて、米長期金利は上昇へ向かったのか、一般的には米経済のソフトランディング(軟着陸)への期待を受けた動きとの理解が多いだろう。
米金利上昇を受けて、日本の金利も、日銀利上げ見通し後退にもかかわらず上昇してきた。日本の金利上昇にもかかわらず円安になったのは、それ以上に米金利が上昇し、日米金利差米ドル優位が拡大したためだろう。
以上のことから、最近にかけての円安に対して日銀利上げ見通し後退の影響はほとんどなかったと言えるのではないか。そもそも日本の金利は低下しておらず、むしろ金利が上昇したにもかかわらず円安になったのは、日本以上に米金利が上昇し、米ドル高になった結果ということになる。この先さらに円安が広がるかは、日銀利上げ見通しではなく、米金利上昇に伴う米ドル高が続くか次第になるだろう。