日銀短観からみえる銀行業の好景気
今回は銀行セクターに焦点を当てます。
日銀は3ヶ月に一度、「日銀短観」を発表しています。「短観」と呼ばれるこの景気調査は、日銀が経済の現状について企業へのアンケートを通じて調べたものです。
その短観の最新版が10月1日に公表されました。そこで目を引いたのが金融セクター、とりわけ「銀行業」の景況感の良さです。
代表的な指標である「業況判断」は、銀行業は「31」でした。3か月前の調査では「25」だったので、そこから「+6」も改善しています。
銀行業の業況判断は、2021年12月の調査から「20」の大台が3年近く続いています。元々が好景気だった上に、今回はとうとう「31」へと大きくジャンプアップしました。
業況判断が30を上回ったのは、2007年12月に「42」という高い数値を記録して以来、実に17年ぶりのことです。
銀行業が好調な2つの理由
銀行業の何がそんなに好調なのでしょうか。理由は2つあると考えられます。
1つは利ザヤの改善です。
一般に銀行業は、世間の預金者から広く預金を集めて、事業資金を必要とする企業や個人事業主に貸し出しています。集めた預金に支払う利息と、資金を貸し出す際に得られる利息収入との差(利ザヤ、スプレッド)が銀行の儲け、利益となります。
利ザヤは金利の上昇局面で拡大しやすいため、銀行は金利が上昇する場面で収益が拡大しやすくなり、同時に株価も上昇しやすくなるとみられます。
日銀は2024年3月にマイナス金利を解除しました。7月には続けて政策金利を0.25%程度に引き上げ、これによって2008年12月以来、ついに「金利ある世界」に戻ったのです。金利のある正常な世界に戻ったことで、銀行業界が久しぶりに活気づいている様子が浮かび上がります。
そしてもう1つの理由が、銀行の本業部分が拡大している点です。
現在の銀行の業務範囲は、預金を集めてそれを貸出に回すという従来ビジネスにとどまりません。融資先の企業がネット通販を行う場合、その導入やセキュリティ、クラウド化など、デジタル面をサポートしています。
あるいは後継者を探す企業のM&Aの仲介や、スタートアップ企業に融資するなど、従来にはないサービス分野が拡大しています。それらの要因が幾通りも組み合わさって、銀行業界を活気づかせているものと推察されます。
銀行セクターが活気づくマーケットは健全です。日本のデフレ脱却はいよいよ本物となりつつあるようです。今回は業績が好調な銀行をご紹介します。
健全経営のメガバンクから最高益更新中の地方銀行まで、業績好調な銀行業銘柄4種
地域連携を積極手に推進するりそなホールディングス(8308)
メガバンクを形作る5大銀行グループのひとつ。大和銀行、埼玉銀行、協和銀行などが経営統合して生まれた。傘下には、りそな銀行、埼玉りそな銀行、関西みらい銀行、みなと銀行を有する。2003年に大手銀行として最初に公的資金の注入を受け、その後の不良債権処理への道筋を作った。現在は不良債権比率が1.34%、自己資本比率は12.85%ときわめて健全。地域連携、地方銀行との業務提携を積極的に推進する。
14年連続の増配も視野に 山口フィナンシャルグループ(8418)
2006年に山口銀行(源流は1878年に創業した第百十国立銀行)が、もみじホールディングス(広島総合銀行とせとうち銀行を傘下に有する)と設立した金融持株会社。2011年に北九州銀行も統合して、山口・広島・福岡(北部九州)の3県を地盤とする。預金量は10.3兆円、貸出金は8.4兆円に拡大。今期も過去最高益が予想され、14年連続での増配も視野に入る。
本州、四国、瀬戸内海のクロスポイント ちゅうぎんフィナンシャルグループ(5832)
岡山県を地盤とする中国銀行を中心に、リース、カード、証券、アセットマネジメント、コンサルティング会社を持株会社の傘下に有する。預金量は8.0兆円、貸出金は5.4兆円に達し岡山県では断トツ。中国銀行をメインバンクとしている企業の数は17,000社を超え全国15位に入る。本州と四国、瀬戸内海のクロスポイントとして成長余地は大きい。今期第1四半期(4-6月)は最高益を更新。
早期から地域の社会課題の解決に取り組む 山陰合同銀行(8381)
島根県の松江銀行(設立は1889年)と鳥取県の米子銀行(1894年設立)が合併して1941年に誕生。愛称は「ごうぎん」。地盤の島根と鳥取は名目GDPで全国第45位と47位。さらに人口減少、高齢化、スタートアップ企業の開業率、脱炭素の遅れ、いずれも全国最下位クラス。同行は日本の「課題先進地域」として、日本中で最も早く社会課題の解決に取り組んできた。山崎頭取の下で外国人バンカーを社外取締役に招き、生え抜きの女性社員を代表取締役に抜擢するなど、真摯に経営改革を進めている。今期も史上最高益を更新。