米国株はマグニフィセント7以外の幅広い銘柄が上昇

FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げが起きてから1週間が経ちましたが、先週もS&P500は上昇を継続、9月26日(木)には史上最高値を更新しました。先週1週間でS&P500は0.62%上げ、5,738ポイントで引けました。同均等指数であるS&P500イコール指数は1.24%上げ、時価総額加重型指数であるS&P500をアウトパフォームしました。つまり、これはマグニフィセント7(※)のようなメガ時価総額銘柄以外の493銘柄が上昇したということであり、マーケットの裾野の広がりを意味します。

小型株指数であるラッセル2000については、先週0.14%下げ2,224ポイントで終了しましたが、7月16日につけた史上最高値の2,263からあと1.018%というレベルです。

米国ではインフレについて、引き続き改善を示唆する経済指標が発表されています。先週9月27日(金)に発表された8月のPCEコアデフレーター(食料・エネルギーを除く個人消費支出物価指数)は年率1.6%の上昇となり、FRBの目標である2%を下回りました。家賃PCEの急速な反発が続いている中での結果であり、家賃を除いた場合のPCEコアデフレーターは年率0.6%まで低下しています。また、8月のスーパーコア(住居費を除くサービス部門)については年率1.9%となっています。

中国の景気浮揚策に市場は好感、中国株は52週の安値から高値へ最速上昇

新興国株が堅調です。MSCI新興国指数は先週6%上昇し、9月27日(金)には2024年の高値を更新しました。

MSCI新興国指数に大きな影響を与えたのは中国株の大幅上昇です。先週中国株が上がるきっかけとなったのは、中国人民銀行が利下げを行ったことに加え、景気浮揚策が発表されたことでした。預金準備率の引き下げや不動産市場への刺激策、さらに株式市場向けの具体的な刺激策が含まれました。今回の発表には、5,000億元(10兆円)のスワップファシリティにより、証券会社、ファンド、保険会社は中国人民銀行のバランスシートに直接アクセスし、株式市場の購入資金を調達できるようになることも含まれています。

また、上場企業の自社株買いや既存の大口投資家による株式購入を支援するために3,000億元(6.1兆円)が提供されることになります。これらの一連のサプライズ発表を市場は好感、中国を代表する300銘柄で構成されるCSI300指数は先週1週間で15.7%上昇し、香港のハンセン指数も13%上昇しました。

米国市場上場の中国関連ETFは、先週(9月23日週)の最初の4日間で約7億ドル(994億円)の純流入を記録しましたが、これは2022年7月1日以来最大の週次の資金流入となっています。

CSI300指数は、9月13日に引け値ベースで52週の安値をつけたばかりの中、9月27日(金)に52週の高値に達しました。これは、同指数にとって史上最速の52週安値から52週高値への動きです。ヨーロッパでは、先週STOXX600指数が2.7%上昇し、史上最高値を記録しました。

その主な理由もやはり中国です。中国経済の恩恵を受けてきた欧州の高級品ブランドや鉱業株が、今回の中国の景気浮揚策の発表を受けて大きく買われました。例えば、LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンは先週19%上がり、STOXX600の一般消費財・サービスセクターを押し上げました。同指数は先週12.4%上昇し、STOXX600指数の上げに貢献したのです。

中国株の上昇は一時的なものなのか?

2023年春からの日本株の上昇局面では、中国株を売って日本株を買うという声も聞かれ、マーケットでは中国市場に対し悲観的な意見が支配的でした。しかし、私がマーケットを長年見てきて思うのは、誰もが否定的になり諦めている時に、株式市場は最悪のシナリオを織り込んでボトムアウトし、株価は突然上昇し始めるということです。

では、先週の中国株の上昇が一時的なものなのか、それともしばらく続くのか。市場のバリュエーションを見てみたいと思います。

2024年の予想EPSを使った日経平均のPERは21.9倍、一方、CSI300指数のPERは13.5倍です。2025年の予想EPSを使うと日経平均は19.8倍へと下がりますが、CSI300指数も12倍へと下がり、引き続き日本株比で中国株に割安感があります。また、2006年からこれまでのCSI300指数の平均予想PERは16.4倍であることから、現在の市場のバリュエーションは歴史的に見て割安なレベルであると言えそうです。

(※)アップル[AAPL]、マイクロソフト[MSFT]、アルファベット[GOOGL]、アマゾン・ドットコム[AMZN]、メタ・プラットフォームズ[META]、エヌビディア[NVDA]、テスラ[TSLA]