2024年9月27日(金)8:30発表
日本 消費者物価指数東京都市部2024年9月速報

【1】結果:東京コアCPIは節目の2%に

2024年9月の東京都市部消費者物価指数(以下、「東京CPI」)は、ヘッドラインの総合指数、生鮮食品を除くコアの2指標において前回8月の公表値からともに0.4%ポイント低下しました。

9月は主に、政府による酷暑乗り切り緊急支援策の影響によって、エネルギーが指数を押し下げた結果が表れています。生鮮食品・エネルギーを除いたコアコア指数では、前回から変わらず横ばいの結果となりました。足元の物価動向は食料やエネルギーの変動によって上下ある一方で、その他の財やサービスの変動は落ち着きを見せている印象です。

【図表1】東京CPIの結果
出所:総務省よりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:思っているほどに食料関連のインフレは顕著ではない

今回、政府支援策の影響によるエネルギーの低下によって全体の指数は鈍化が確認されました。しかし、直近では供給不足が原因となったコメ価格の上昇など、コストプッシュインフレの再燃が懸念されています。コストプッシュに起因する品目に注目して推移を確認すると、まず生鮮食品は前月比ベースをみると直近2ヶ月では上昇が確認できますが、2022年以降のピークと比較すると、2024年に入って、前年比10%以上の上昇は確認できないことが分かります。

【図表2-1】東京CPI:生鮮食品の推移(前年比、前月比、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成、前年比、前月比ともに季節調整前の値

生鮮食品を除く食料をみると、足元では横ばいに推移しており底打ちの兆しがあります。しかし、こちらも一時のピークと比較すると、その上昇幅が大きなインフレ要因となっているとは言い難いと筆者は考えています。また、米などは先行きにおいて供給不足も解消される見通しであるため、価格も抑制されていくと考えられます。

【図表2-2】東京CPI:生鮮食品を除く食料の推移(前年比、前月比、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成、前年比、前月比ともに季節調整前の値

電気代等を含めたエネルギーですが、今回9月の結果は酷暑乗り切り緊急支援策による下押しによるものです。総務省の試算では、同支援策の全体に対する下押し効果は寄与度にしてマイナス0.51%ポイントとされています。仮にこの支援がなかった場合は、エネルギーはプラスに寄与していたと試算されますが、向こう数ヶ月は支援策の影響によって、エネルギー価格の動向は低下傾向で推移すると考えられます。

【図表2-3】東京CPI:エネルギーの推移(前年比、前月比、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成、前年比、前月比ともに季節調整前の値

【3】所感:9月全国CPIも低下が見込まれる

10月18日に発表される予定の9月の全国CPIも、エネルギーの下押しによって低下が予想されます。政策効果による下押しであり、本来の物価動向を捉えているとは言い難いものの、東京コアコアCPIもサービスインフレなどの上昇が依然として確認できない中で、2%を割り込む状況となりました。直近の金融政策決定会合において植田総裁の「追加利上げへの時間的余裕が生まれた」といった発言もあり、低下傾向であるインフレ指標のもとで、ディスインフレを促す利上げは考えづらいのではないかと感じています。

【図表3】コアCPIの比較(前年比、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成
【図表4】サービスCPIの推移(前年比、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太