2024年9月6日(金)
日本 家計調査・景気動向指数2024年7月の公表値
【1】結果:消費は市場予想を下回り推移、景気動向指数は3指数ともに上昇
2024年7月の家計調査、実質消費支出は前年比0.1%増と3ヶ月ぶりにプラスとなりました。設備修繕・維持関連の支出が実質ベースの前年比に対し、1.14%ポイント上昇に寄与し、一方で自動車等関係費が同マイナス0.61%ポイント押し下げました。Bloombergが集計する市場予想は前年比1.2%増と結果は大きく下回り、また前月比も1.7%減と反転しマイナスとなりました。これらを勘案すると7月の家計消費は3ヶ月ぶりのプラスではあるものの、弱い結果と言えるでしょう。
図表3の通り景気動向指数は、3指数そろって上昇しました。先行指数では、在庫の改善が寄与、一致指数では生産・出荷が前回6月から反転したことに加え、卸売業の商業販売額が上昇に寄与しています。遅行指数では、本日9月6日時点の公表系列ベースでは、失業率が下押し圧力となるも、法人税収入と最終需要財在庫指数の伸びがそれを相殺し、指数の上昇に寄与しました。基調判断は前回から変わらず、「下げ止まり」と発表されています。
【2】内容・注目点:家計調査の収入も伸びが確認できる一方で、支出は前年比マイナスで推移
家計調査の実収入も7月は実質5.5%増(二人以上の勤労者世帯、前年比)と、毎月勤労統計調査で示される名目・実質賃金の上昇と同様に、整合的な増加が見て取れます(実質賃金の上昇については、9月5日掲載レポート参照)。いわゆる手取り収入と言われる可処分所得も足元では、定額減税の影響もあって、7月は前年比7.3%と上昇が確認できます。一方で消費支出はというと、依然として前年比マイナスで推移している状況です(図表4)。
家計調査内でデータが取得できる2001年以降で、実質ベースの可処分所得と消費支出の前年比のデータを散布図にしてみたところ、図表5のような結果となりました。決定係数は0.02とほとんど無相関であることが示され、当月の手取りが増えたとしても、当月に支出が増えるわけではないと判断できます。私も含め多くの家計の実生活を想像してみても、将来の不確実性などを予想し、増えた分だけ消費するといった行動を少なく、ある程度は貯蓄に回す選択をするものでしょう。
実際には、図表4からも読み取れるように、2022年以降、実質ベースの可処分所得は前年比マイナスが続いてきたことなどからも、家計防衛的な消費行動を制限することは想像し難くないと考えています。2024年度に入って可処分所得がプラス転換してきており、先行きについては可処分所得が安定的にプラスに推移し、後から消費がついてくることに期待したいと思います。
【3】所感:供給サイドの消費は堅調
家計調査からみる7月の消費は、市場予想も下回り、弱さがうかがえました。一方で、供給サイドをまとめた日銀の消費活動指数も本日9月6日に7月分データが発表されましたが、こちらは上昇が確認でき、2つを総合するとまちまちといった印象です。消費活動指数はGDPの内訳である個人消費と相関性が高いことで知られており、7-9月の個人消費は好スタートをきったと推察もできます。
家計の消費マインドを確認すると8月の消費者態度指数は横ばいで、上向きが確認できるわけではありません(図表6、7)。指標間で判断がまちまちとなる状況であるものの、消費が落ち込んでいる・縮小傾向にあるといった内容ではないことは安心材料になると感じています。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太