8月上旬の波乱の展開から、日経平均は順調に値を回復してきました。前回のコラムで「半値戻しは全値戻し」との相場格言を紹介しましたが、これまでのところはその格言通りの展開となっていると言えるでしょう。直近は反発の勢いが徐々に陰ってきた感は否めないものの、そもそも今回の暴落がかなりのあく抜きとなった中、売り買い交錯を通じて値固めが進む展開は決して悲観するものではないと受け止めています。

そして今後は、マクロ的に重要なニュースが目白押しとなる見込みです。米国では、米大統領選のテレビ討論会が予定されており、また、FRBが利下げに踏み切るとの観測も台頭しています。国内でも実質賃金のプラス定着が予測される上、与野党両第一党の総裁・代表選実施の後には早々に新首相が選出され、遠からず衆院解散・総選挙が実施されるとの見通しも出てきています。これらのニュースフローを1つ1つ確認しつつ、市場は堅調に推移するのではないかと予想しています。

気候変動による自然災害が及ぼす影響

今回は「温暖化に伴う気候変動や台風等による影響」を採り上げてみましょう。先週、西日本を横断した台風10号は各地にさまざまな爪痕を残しました。九州地方や東海地方では強烈な雨に見舞われ、被害に遭われた方も少なくありませんでした。この場を借りて、お見舞いを申し上げたいと思います。

かくいう筆者も大幅に遅延した新幹線で缶詰を強いられた一人であり、台風や線状降水帯が多数発生する近年の状況には危機意識を改めなければと痛感した次第です。物理的被害は当然として、交通機関の混乱や予防的な工場操業停止など、直接・間接的な台風や線状降水帯による昨今の経済的影響は甚大なものになっていると想像します。

これを地球温暖化が原因と単純に結びつけるのには議論の余地があるものの、最高気温が40℃近くという状況が頻発することを併せて見れば、やはり地球環境の構造的変化に対して一抹の懸念が拭えないというところでしょう。換言すれば、台風などによる強風、大雨、高潮など強大な自然の力に抗することはできない以上、安全面でも経済面でも事前対策と事後対応の重要性がかつてないほどに高まっていると言えるのかもしれません。9月は台風シーズンとも位置づけられます。読者の皆様もぜひ、十分に対策を取っていただきたいと思います。

被害を防ぐ事前対策と復旧のための事後対応の両軸が重要

台風や線状降水帯による被害の主なものは、水害、風害、土砂災害、高潮(海面上昇)被害、波浪(高波)被害となります。これらはいずれも密接かつ相互に関連するものであり、さらに停電などライフラインの不全被害に派生するというのがその実態と言えるでしょう。その被害抑制には、被害を未然に防ぐ事前対策と災害後の復旧に資する事後対応が求められることになります。

事前対策では、地盤改良などの特殊土木や橋梁・道路・河川など「国土強靭化」に向けての土木工事などは不可欠です。停電対策となる送電線の地中化推進も重要な施策でしょう。個々人の安全確保のためには、災害グッズや非常用電源の手配や家屋補強などが求められるはずです。

一方、事後対応では排水ポンプや建機・重機の迅速な調達、復旧に向けての鉄鋼資材の確保などが欠かせないと考えます。なお、ここでは台風被害を想定して考えていますが、これらの多くは地震時にもそのまま適用が可能なはずです。くしくも先月8月は南海トラフ地震に関連する臨時情報巨大地震注意も発令されました。今後、徐々に蓋然性が高まってきている(ように思われる)自然災害への対応・対策は喫緊の課題となってきていると位置づけます。

インフラ、ライフライン、情報提供など防災・減災関連銘柄に注目

では、株式投資という観点ではどのような銘柄群が考えられるでしょうか。ここでは東証プライム市場上場で時価総額500億円超の企業群という条件で、災害対応製品・サービスのウエイトが比較的大きな関連銘柄をスクリーニングしてみました。

まず挙げられるのは、地盤改良などの特殊土木企業やインフラ補修工事、産業資材といった企業群です。具体的には、ショーボンドホールディングス(1414)、ライト工業(1926)、前田工繊(7821)といった企業がリストアップされます。

同じくライフライン維持に向けて進捗が期待される電線地中化関連では、電設工事大手の関電工(1942)、きんでん(1944)、中電工(1941)、通信工事大手のエクシオグループ(1951)、コムシスホールディングス(1721)などを、その代表格と位置づけます。

また、事前・事後で必要となる建機レンタルという領域では、ニシオホールディングス(9699)、カナモト(9678)、ワキタ(8125)などが挙げられるでしょう。非常用電源ではデンヨー(6517)、水中ポンプでは荏原製作所(6361)、鶴見製作所(6351)、そして、台風など気象情報の提供という視点ではウェザーニューズ(4825)、といった企業も忘れてはいけないと考えます。

概して、被災影響を抑制するというニーズは今後、(こういった気象状況が続く限り)継続的に発生することでしょう。防災関連銘柄は是非とも頭の片隅に入れておいていただきたいと思っています。