日経平均はじり安の展開で、36,500~38,000円程度の狭いレンジでの推移となっています。株式市場は引続き調整局面のまま、膠着(こうちゃく)しているといったところでしょう。国内景気の景況感軟化に加え、今回のテーマに取り上げた関税問題などが株価の重石となっている模様です。

また、沈静化の兆しが見えたかに思えた欧州・中東各地の戦乱も行方は混迷の色が隠せず、これまで指摘してきた「モノゴトが動き始めたという印象」も希薄になってきました。当面の株式相場は、きっかけ不在のまま、材料不足の状態で一進一退が続くのかもしれません。

そもそも関税とは? 影響、メリットについておさらい

さて、今回は注目度の高い「関税」をテーマに取り上げてみたいと思います。トランプ米大統領は就任以降、驚くほど積極的かつ強烈な関税政策を推進し、4月3日には自動車に25%の輸入関税発動が予定されています。これらはかねてよりの公約通りではあるものの、米株式市場ではその影響を測りかねる反応が継続しています。ここではこの関税の影響をおさらいし、そこからどのような企業・産業の投資魅力度が高いのか、注目できるかについてまとめてみましょう。

そもそも関税とは、国外から輸入される商品/製品に課せられる税金のことです。この税金は輸入業者が納税するのですが、輸入業者はその分を商品/製品価格に転嫁して販売するのが一般的です。その結果、輸入品の消費者価格は上昇することとなります。実際、イタリア高級自動車のフェラーリは米向け販売価格の引上げを発表しました。

その一方で国内品の価格競争力は相対的に改善するため、海外企業はこの競争力低下抑制のために自身も国内品となるべく生産拠点を移管するという動きも出てくるでしょう。既に韓国現代自動車は米国への巨額投資を決めています。

つまり、関税政策は国内産業保護や投資拡大に直結し、同時に国としては税収が増加するという魅力的な施策ではあるのです。

関税の負の部分とは? 日本経済に与える影響

にもかかわらず、米国を含む世界市場で先行不透明感が台頭しているのは、関税の負の部分を懸念しているからに他なりません。

まずは消費者が輸入品を高いお金を払って買わなければならなくなるため、購買力の低下やそれに伴う国内消費の停滞懸念が挙げられます。国内品が輸入品と同等の商品魅力度ならばこの政策で国内品需要は喚起されますが、国内品の魅力がそうでもなければ、消費者は結局(高価な)輸入品を選択せざるを得なくなってしまうのです。

より構造的には、国内競争力の低下懸念が挙げられるでしょう。関税によって輸入品がハンデを負うこととなれば、国内産業はそこまで激烈な競争に晒されることはありません。現状肯定で良しとなり、結果的に競争力は弱いままで温存され、消費者は安い価格で良いモノを取得できないという状況を強いられます。これは市場のガラパゴス化を招き、その産業を駆逐させかねない関税政策の緩和撤廃にはさらに否定的になるという悪循環を生むことにも繋がります。

つまり、関税収入増に対し、消費者は逆に物価高や製品選択に苦しむことになりかねないのです。関税政策がスタグフレーション(不況下での物価上昇)を招くのではという観測はこうした懸念に基づいているのです。

一方、米国への輸出企業にとっては文句なしに逆風です。仮に国内品を凌駕する盤石の商品魅力度を備えていたとしても、消費者価格上昇で価格訴求力低下は不可避です。この影響を緩和するためには、関税分を減殺する値引きの実施しかありません。これは当然、輸出企業の業績には打撃となります。

日本から見て、米国は輸出総額の4割を占める最大の輸出相手先です。関税がどこまで適用されるかは不明ですが、関税政策が日本経済に与える影響は相当なものとなることは想像に難くないでしょう。これが日本の株式市場でも関税問題が懸念される理由なのです。

米国の関税政策でメリットを受ける産業はない

では、株式投資という観点ではどうでしょう。残念ながら、米国の関税政策でメリットを直接受ける産業は見当たりません。カナダや欧州のように報復関税を実施すればそれでメリットを受ける産業もあるかもしれませんが、自由貿易推進の旗を日本政府が自ら降ろす政策判断は俄かに想像できません。米国内に拠点を有する企業では追い風を受ける可能性もありますが、日本からの輸出部分があればそれには逆風となるため、その効果は減相殺されてしまいます。

関税の影響を受けない銘柄をピックアップ

となると、米国とは全く無縁の企業群か、関税対象外の産業が消去法的に選択されることになるでしょう。前者の代表は内需株であり、後者の代表はオンラインコンテンツなどになります。オンラインコンテンツは貨物の輸出入に相当せず、課税対象の特定が困難なため、現時点では関税対象から外れているという特徴があります。関税の足枷なく、世界市場を視野に入れることのできるオンラインコンテンツ銘柄は成長ストーリーとしても投資魅力度は高いと位置づけることができるでしょう。

東証プライム上場で時価総額5,000億円以上の企業で具体的に考えてみると、オンラインゲームにおいて、任天堂(7974)、ソニーグループ(6758)、コーエーテクモホールディングス(3635)、セガサミーホールディングス(6460)、バンダイナムコホールディングス(7832)、スクウェア・エニックス・ホールディングス(9684)、カプコン(9697)、コナミグループ(9766)などが挙げられます。

また、コンテンツ(IP)関連においては、KADOKAWA(9468)、サンリオ(8136)、東映アニメーション(4816)、東宝(9602)などがリストアップされてきます。もちろん、時価総額がそれ以下の企業においても成長ポテンシャルは多分にあると言えるのではないでしょうか。

とはいえ、関税政策はややもすると報復合戦となりかねず、それは結果として世界の結びつきを弱め、かつて発生した世界戦争の遠因にも繋がりかねません。これは二度の世界大戦から学んだ教訓でもあります。あくまでこうした流れはエスカレートせず、政治上の駆け引きにとどまってほしいところです。