7月末の追加利上げを契機とした波乱の展開はようやく落ち着きを見せてきました。この変動を受けて心が萎えてしまったという方も少なくないのではないでしょうか。特に、最近新NISAなどを契機に初めて株式など投資を始められた方には強烈なインパクトであったものと推察します。

直近の市場は年初来高値からの急落は半値戻しを達成し、「半値戻しは全値戻し」との相場格言に期待できる状況となっています。また、岸田首相が自民党総裁選出馬を辞退したことで、早期の衆院解散・総選挙も視野に入ってきました。「国政選挙は買い」という経験則もあります。日々の値動きに狼狽することなく、大きな流れの中で投資を考えるということをぜひ忘れずに臨んでいただきたいと思います。

日本が誇るコンテンツ産業、その定義とは

さて、今回は「コンテンツ産業」を採り上げてみましょう。日本のコンテンツ産業と言えば、アニメなど世界的に注目されている成長産業というイメージではないでしょうか。ある意味、自動車産業やエレクトロニクス産業のように、世界で最も認知されている日本を代表する産業の1つと位置付けることもできます。

まずはコンテンツ産業という言葉をしっかりと定義しておきましょう。一般的にコンテンツ産業と言えば、「ゲームやアニメ、映像・画像、音楽など人間の創造的活動により生み出された創作物を扱う産業全般」とされます。

具体的には、創作物の制作会社、配給・配信会社、イベント運営・権利管理会社に加え、放送・出版・広告・特許などの関連事業者の総称と言ってもよいかもしれません。しかし、これではあまりに対象領域が広くなってしまうため、ここではコンテンツの所有権・利用権・著作権を有することの多い制作会社や権利管理会社に焦点を当てて考えてみたいと思います。

IPの訴求によりビジネスチャンスが飛躍的に拡大

コンテンツ産業が成長するきっかけとなったのは、その創作物そのもののクオリティの高さに加え、創作物を「知的財産(IP:Intellectual Property)」として捉え、それを様々なメディアやツールを通じて市場性を高めるという手法の浸透にあります。

かつて、コンテンツの「賞味期限」はTVや映画、音楽の発売や放映・公開されている期間と大きくリンクし、製作委員会形式でのアプローチはその後の事業展開余地に限界がありました。しかし、インターネット配信の普及などでIPの訴求が全世界的に可能となり、アーカイブへの容易なアクセスと相俟ってターゲット潜在市場が急拡大し、「賞味期限」も大幅に延びることとなったのです。

その実例として、国内において近年は(昔懐かしいもののリバイバルを含めた)アニメキャラクターや音楽とのコラボを前面に押し出したゲームや商品、イベントが増加した上、海外への訴求においては日本アニメや漫画ファンの訪日モチベーションを高めることや、80年代の日本の「シティポップ」音楽が海外から再評価されるという結果をもたらしています。コンテンツをIPと捉えたことで、ビジネスチャンスは飛躍的に膨らむことになったと言えるでしょう。

コンテンツの価値は川下から川上へ

当然ながら、これはビジネス構造における付加価値に変化をもたらしています。かつては、コンテンツを如何に配信提供するかが重要であったため、TV放映枠や上映映画館を如何に確保するかの手腕が問われました。音楽もコンサートツアーやTVや映画とのコラボなど、消費者への訴求手段はかなり限定されており、結果として、配信・配給など「(コンテンツの訴求浸透手段を提供する)川下企業」に付加価値が傾斜する状況にあったのです。

しかし、視聴者・消費者の情報収集手段がWEBなどによって劇的に増えたことににより、「どうやって伝えるか」ではなく「何を伝えるか」の重要性が増すようになりました。結果として、付加価値はより川上であるコンテンツへ傾斜を始め、IP化するにしたがってさらにその流れが加速してきたと言えるのです。前段で「ここではコンテンツの所有権・利用権・著作権を有することの多い制作会社や権利管理会社に焦点を当て」としましたが、これはまさに現在より大きな付加価値を生み出している階層に注目する、ということでもあるのです。

とはいえ、そういった制作会社や権利会社の多くは未公開企業であり、一般の方がそれら企業の株式に投資をすることはまずできません。好きなミュージシャンの事務所やアニメ制作会社の株式を持つことで応援したいと考えても、なかなかそうはいかないという現実をご理解いただければと思います。

世界的なIPコンテンツを持つ、投資判断に役立てたい企業群

では、上場している企業にはどういった企業があるのでしょうか。世界的なIPコンテンツを有している企業としては、ソニーグループ(6758)、任天堂(7974)、バンダイナムコホールディングス(7832)、セガサミーホールディングス(6460)、スクウェア・エニックス・ホールディングス(9684)、東映アニメーション(4816)などが売上上位企業としてリストアップできます。

より国内型のIPコンテンツ企業としては、東宝(9602)、サイバーエージェント(4751)、KADOKAWA(9468)などが規模の大きな企業となります。音楽に特化すると、企業規模は小さくなりますが、アミューズ(4301)、NexTone(7094)といった企業が代表格に位置付けられます。ぜひ、参考にしてください。