モトリーフール米国本社、2024年8月18日 投稿記事より

高い実績のあるヘッジファンド・マネジャーが第2四半期にブロードコム[AVGO]に投資

人工知能(AI)ブームの申し子である半導体メーカーのエヌビディア[NVDA]は、株主に驚異的なリターンをもたらしています。急騰する株価をリセットするために、2024年6月に1対10の株式分割を実施したほどです。

そうした中、複数のヘッジファンド・マネジャーが第2四半期にエヌビディアのポジションを縮小し、その売却益を同業のブロードコム[AVGO]の購入に充てました。ブロードコムもまた、1対10の株式分割を最近実施したばかりです。

・ミレニアム・マネジメントのイスラエル・イングランダー氏は、エヌビディア株67万6,242株を売却し、持ち分を5%減らしました。一方で、ブロードコムの持ち分を55%増やし、同氏のポートフォリオの中で8番目に大きなポジションとしました(オプションを除く)。

・シタデル・アドバイザーズのケン・グリフィン氏は、エヌビディア株920万株を売却し、持ち分を79%も減らした一方で、ブロードコムの持ち分を64%増やしました。これにより、ブロードコムは同氏にとって10番目に大きなポジションとなりました(オプションを除く)。

・D.E.ショーのデービッド・ショー氏は、エヌビディア株1,210万株を売却し、持ち分を52%減らしました。その一方で、ブロードコムの持ち分を229%も増やし、今では7番目に大きなポジションとなっています。

これら3名のマネーマネジャーが運用するヘッジファンドはいずれも、運用開始以来のネットリターンが最高クラスのファンドです。そのため、イングランダー氏、グリフィン氏、ショー氏が行うトレードは注目されています。以下では、エヌビディアとブロードコムについて深掘りしてみましょう。

エヌビディア[NVDA]:株式分割を実施して売られているAI銘柄

エヌビディアの画像処理装置(GPU)は、専用のハードウェアとソフトウェアを組み合わせることで3DグラフィックスやAIアプリケーションといった複雑なワークロードの高速化を可能にする、アクセラレーテッド・コンピューティングにおける絶対的基準です。エヌビディアは、ワークステーション向けGPUで95%超、データセンター向けGPUで90%超の市場シェアを占めています。さらに重要なことに、同社は現在、AI向け半導体売上の80%超を占めています。

エヌビディアの成功には、ソフトウェアのエコシステムが確立されていることが大きく寄与しています。同社のCUDAプラットフォームには、科学計算、データサイエンス、機械学習といったさまざまな分野のモデルの訓練やアプリケーションの開発を効率化するための、数百ものソフトウェアライブラリ(ビルディングブロック)が含まれています。CUDAのエコシステムは20年近く前から開発が続けられているため、エヌビディア製GPUは、特にAI関連など、アクセラレーテッド・コンピューティングを用いるアプリケーションの開発者にとって絶対的な選択肢となっています。

CFRAのアンジェロ・ジーノ氏は、エヌビディアが「今後10年間の現代文明において最も重要な企業になる」と考えています。ここに重要なポイントが含まれています。第2四半期にエヌビディアのポジションを縮小したとはいえ、先に述べたヘッジファンド・マネジャーのうち2人は、依然としてエヌビディア株を大量に保有しています。オプションを除くと、エヌビディアは、イングランダー氏のポートフォリオの中で5番目、ショー氏のポートフォリオの中で3番目に大きなポジションを占めています。

8月28日に決算発表を控えており、またBlackwell GPUの出荷が3ヶ月遅れると報じられたことにより、エヌビディアの株価は短期的に不安定になる可能性があります。Blackwell GPUは、従来のHopperアーキテクチャと比べてはるかに高速なAIの訓練と推論を可能にするもので、年内に出荷が予定されていました。経営陣は、決算発表の際に最新状況について説明するとみられ、内容次第で株価が大きく動く可能性があります。

とはいえ、Blackwell GPUはいずれ出荷されるはずで、エヌビディアは、企業がAI関連の支出を増やした場合に恩恵を受ける理想的な位置にいます。ウォール街では、同社の利益が今後3年間で年率37%増加すると予想しています。この予想に基づくと、株価収益率(PER)73倍という足元のバリュエーションも比較的妥当なものに見えてきます。PER÷1株当たり利益(EPS)成長率で算出されるPEGレシオは2倍となり、過去3年の平均値である3.1倍を大幅に下回ります。

エヌビディア株に関心があるなら、最初は小さなポジションから始めると良いかもしれません。8月末の決算発表で株価が下落したら、買い増しを検討すると良いでしょう。

ブロードコム[AVGO]:株式分割を実施して買われているAI銘柄

ブロードコムの事業は、半導体ソリューションとインフラストラクチャー・ソフトウェアに分かれており、同社は両分野で強い存在感を示しています。半導体ソリューション事業では、ネットワーキング向け半導体と、AIのような特殊なユースケース向けのカスタムチップである特定用途向け集積回路(ASIC)の分野で市場リーダーです。

インフラストラクチャー・ソフトウェア事業では、ブロードコムの子会社であるVMウェアが、サーバー仮想化ソフトウェアとハイパーコンバージド・インフラストラクチャーの市場をリードしています。ハイパーコンバージド・インフラストラクチャーとはソフトウェア定義プラットフォームを指す用語で、仮想化されたコンピュート、ストレージ、ネットワーキングを組み合わせることで、企業が物理的インフラを効率的に利用できるように支援します。フォレスター・リサーチ[FORR]はブロードコムについて、クラウドコスト管理ソフトウェアのリーダーとしても評価しています。

ネットワーキング向け半導体におけるリーダーシップもブロードコムの利益にプラスに寄与するとみられますが、特に大きな勢いが見込まれるのが特定用途向け集積回路(ASIC)です。現在、AI向け半導体に占めるASICの割合は10%未満ですが、モルガン・スタンレー[MS]の予測では、今後5年間でこの割合が30%に達する可能性があります。これは、AIコンピューティングにおいてASICがGPUからシェアを奪うことを意味します。ゴールドマン・サックス[GS]のアナリストは最近、「エヌビディアと並んで、ブロードコムも現在進行中のAIインフラの構築にとって重要なピースである」と述べています。

今後について、ウォール街はブロードコムの非GAAPベースEPSが2026年にかけて年率21%で成長すると予想しています。この予想に基づくと、PER37.8倍という足元のバリュエーションは妥当な水準に見えます。忍耐力のある投資家であれば、小さいポジションでブロードコムの購入を検討する価値があるかもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Trevor Jennewineはエヌビディアの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はゴールドマン・サックス・グループ、エヌビディアの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社はブロードコムの株式を推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。