5月中旬~6月の香港株は調整も企業業績は堅調

2024年5月20日(月)終値~6月3日(月)までの中国株の騰落率は、上海総合指数が-2.9%、香港ハンセン指数は-6.3%となりました。特に大きなニュースが出た訳ではない香港株が大きく下落した理由は、5月中旬までに大きく上昇したことに対してのテクニカル的な反動としての下落の側面が大きいと思います。

ただ、中国は次々と経済政策を打ち出しています。5月27日には上海市が住宅購入規制をさらに緩和。また、同じく5月27日には国内の半導体産業を支援するために480億ドル(約7兆5000億円)近い規模のファンドを創設することを発表。米国との対立で最先端の半導体製造技術を導入できない中で技術格差の縮小を狙っています。もちろんこれは中国の半導体企業にとってプラスのニュースであり、株式市場にとってもプラスです。

テンセントは短編動画が成長ドライバー

主要企業の決算も続々と発表されてきています。たとえば、時価総額で最大銘柄のテンセント(00700)の業績は昨年初めから採算改善に向かい、四半期ごとに良くなり続けてきました。2023年後半からは連続して、売上高、調整後一株利益とも過去最高を続けています。

新たな成長を引っ張るのは、短編動画投稿の「視頻号(Video Account)」です。中国語で「シーピン・ハオ」と呼ばれます。いわゆるTikTok(バイトダンス社が運営。中国版は抖音(Douyin)と呼ばれる)と同じサービスで、1分以内の短尺動画を投稿や視聴できるプラットフォームです。

ライブ配信機能も備え、いいねやギフトなどでインタラクティブに交流でき、投げ銭のほか広告からの収入が育っています。2020年初めにリリースされ、13億人のユーザーがいる「微信」のアカウントでログインできることから、10億人を超えるユーザーがいると言われます。

アリババは短期的には構造改革に時間がかかりそうだが長期的な業績拡大の期待は出来る

また、テンセントと双極をなすIT企業であるアリババ集団(09988)の業績も好調です。アリババの財務は健全ですが、あまりにも事業多角化を進め過ぎたが感あり、国内通販事業が利益の大半を稼ぐ構造が続きます。

一方で、莫大な総資産額の過半は赤字の多数の事業が占めると推測されます。売上高においても赤字事業の方が主力の国内通販より大きくなっており、事業の大半は無駄に赤字を生んでいるのです。それでもネット通販自体は国内、越境ECとも一般の小売市場全体に比べ成長しており、アリババはこの分野で主導的な立ち位置を取り戻すべく、多額の費用をかけてシェアや売上を優先していくでしょう。そのため、しばらく利益の大きな伸びは期待できないかもしれませんが、長期的な業績拡大の期待はできると思います。

小米はEVが成長の原動力に

もう1社例をあげると小米(01810)が上げられます。小米はスマホメーカーでしたが、現在はEVに進出しており、新型EV「SU7」「SU7 Pro」「SU7 Max」を発売(3月28日)し、27分間に5万台もの注文を集め、予約台数は10万を超えました。小米EV車は航続距離やスピードでテスラ、ポルシェ、ベンツの高級EVを上回る性能を持ちながら、価格はテスラ車の最も安いモデルを下回ります。

その後、同社は2024年の販売目標数を12万台に引き上げました。受注のうち最大を占めるのは最上位モデルの「SU7 MAX」で4割を占め、残りを標準モデルの「SU7」と上位モデルの「SU7 Pro」が3割ずつを占めます。旺盛な需要に応えるため、工場を6月から二交代制でフル稼働させ、月間納車台数1万台以上としていく計画です。

第2四半期決算よりEVが売上高に加算されていくことから、2024年だけで予想を上回る貢献となりそうです。具体的にどれくらいの売上増になるか計算すると、一台平均価格を仮に22万元とすれば、264億元となり、これだけで昨年売上高を10%近く増加させます。また中国のEV車市場全体において、初年度から2%を超えるシェアを持つことになります。

一方で、衝撃的な価格設定によって同社自身は儲けがないことを認めており、利益への貢献は早くても2025年かそれ以降と思われます。そもそも、この事業で黒字化するのは簡単でなく、新興の中国EVメーカーの多くは今も利益を出せずにいます。ただ、EV専業メーカーと違い、小米は他の事業が黒字であり、資金的にも余裕があります。全体としての利益はしばらく伸びそうにありませんが、EV参入によって売上高を大きく伸ばし、規模を追求していく過程でうまく黒字化を達成できるのではないかと思います。

このように考えていくと中国の主力IT企業は長期的な成長は期待出来る状態にあるのに株価は割安に放置され、そしてようやく上昇基調となってきたところと認識できます。このタイミングを好機と捉えることも十分できるのではないかと思います。