◆今年の日経MJヒット商品番付は「ポケモンGO」と映画「君の名は。」を東西の横綱に選んだ。ともに世代と国境を超えて大ヒットした。文句なしの横綱であろう。それに対して理解できないのは、東の張出大関に選ばれた、ピコ太郎のPPAPだ。どこが面白いのか、そしてなぜこれがウケるのか、さっぱりわからない。それでも米国のヒットチャートであるビルボードにランクインするなど、国際的なヒットとなったのは事実だ。
◆ビルボードのランキングに関して言えば、坂本九さんの「上を向いて歩こう」(英語のタイトルはSUKIYAKI)の偉業には遠く及ばない。1963年6月に1位を獲得すると3週間1位を守り続けた。その後も多くのアーティストにカヴァーされ、現在もなお世界中で親しまれている。「上を向いて歩こう」を超える日本音楽のヒット曲はいまだ現れていない。
◆JR川崎駅は一昨日10日の始発から東海道線ホームの発車メロディを「上を向いて歩こう」に切り替えた。坂本九さんは川崎出身。12月10日は坂本さんの誕生日である。たくさんのひとが乗降するターミナル駅である川崎駅で「上を向いて歩こう」が流れる効果は大きいと思う。「上を向く」というのはいかに大切なことであるか。アベノミクス相場が始まる1か月前、2012年10月のレポートの結びで、僕はボストン・テラン『暴力の教義』の一節を借りた。「下を向いて歩いていたら、小銭はいっぱい拾えるかもしれん。だけど、本気で何者かになるつもりなら、眼の照準はちゃんと眼の高さに据えておくことだ」
◆当時、相場が陰の極にあるときからその後の株高を当てたことで、マネー誌から取材を受けた。「どうしてみんなが弱気のときに株高を予想できたのですか?」「特別なことはなにもないよ。ただ、ちゃんと顔を上げていただけさ」 上を向くのは大事なことだ。しかし今はトランプ相場で少し上を向き過ぎのような気もしないではない。「ポケモンGO」ならぬ「バブルへGO」とならないことを願いたい。