◆ギリシャのバルファキス財務相が、「男性的な魅力が漂う」として人気だそうだ。大型バイクを乗り回し、坊主頭で革ジャンに開襟シャツとクールなファッションが、poor but sexy(貧しくてもセクシー)とファッション誌にも取り上げられるほどだという。セクシーというよりファンキーに見える。金融支援はお願いしたい、だけど緊縮はいやだと、そこまで身勝手なことを言えるのは能天気なほどファンキーだ。
◆EU(欧州連合)は先週末に開いたユーロ圏財務相会合で、2月末に期限が切れるギリシャ向けの金融支援を4カ月延長することを決めた。これを囃して欧米では株が買われ主要な株価指数は最高値を更新した。しかし、根本的な問題は何ひとつ解決したわけではない。とりあえず問題を先送りしただけである。2月末だった期限を4カ月延ばしたということは次回6月にまたこのドタバタ騒ぎに付き合わされる可能性がある。その頃には米国の利上げ開始が現実味を帯びて視野に入ってくるだろう。市場のリスク回避姿勢が一段と強まることに備えが必要と思われる。
◆所詮、「落としどころ」は見えている。仮にギリシャがユーロを離脱するとしよう。もとの通貨ドラクマに戻った瞬間に通貨は大暴落、ハイパーインフレで生活必需品も手に入らない。ユーロ離脱を決めるにはそれを諮る国民投票が必要だが、国民投票に至る以前に大規模なキャピタル・フライト(資本逃避)や銀行の取り付け騒ぎが起こる。それを防ぐためには預金封鎖しかない。そんな事態をギリシャの政権も国民も望んでいない。最後は支援の条件である緊縮策を受け入れざるを得ないだろう。
◆彼らのファンキーさを見ていると、Kick The Can Crewというヒップホップ・ユニットの「パンク寸前のFunk」という曲を思い出す。新政権の面々も表向きは豪胆に振る舞っていても、内心はハラハラで綱渡りをしているような気分ではないか。心臓はパンク寸前だろう。Kick The Can Crewというのは「缶蹴りをする奴ら」という意味。ちなみに英語でKick The Can(缶蹴りをする)というのは「問題を先送りする」というイディオム(慣用句)である。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆