2024年4月10日(水)21:30発表(日本時間)
米国 消費者物価指数(CPI)

【1】結果: 総合、コア指数いずれも市場予想を上回る

3月の米消費者物価指数(CPI)の数値は、前年同月比で+3.5%となり、市場予想の3.4%から上振れし、前回2月の3.2%も上回る結果となりました。

また、価格変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数も、前年同月比で+3.8%となり、前回2月から横ばいとなりましたが、市場予想の3.7%からは上振れする結果となりました。

【図表1】米消費者物価指数(CPI)結果まとめ
出所: Bloombergよりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:インフレ再燃?FRBが注目するスーパーコアは再加速

コアCPIは今回で3ヶ月連続の予想上振れとなり、2023年後半から見られたインフレ鈍化傾向に陰りが見え始めています。

【図表2】米国消費者物価指数(CPI)前年比の推移
出所: Bloombergよりマネックス証券作成

前月比ベースで内訳をみると(図表3)、食品は+0.1%と上昇。家庭内での食事は横ばいも外食が+0.3%と上昇しました。

エネルギーは前月比+1.1%。中東情勢の不安を背景にガソリン価格が上昇しており(前月比+1.7%)、2月から上昇基調が続いています。

食品・エネルギーを除いたコア財は前月比-0.1%と減少。コア財価格には引き続きインフレ鈍化の傾向が見られます。アパレル価格は上昇加速(前回+0.6%、今回+0.7%)したものの、新車(-0.2%)と中古車(-1.1%)ともに減少したことがコア財価格の低下に寄与しました。

【図表3】米消費者物価指数(CPI)前月比の内訳
出所: Bloombergよりマネックス証券作成

 一方で、サービス(エネルギーを除く)では、+0.52%を記録し前月の+0.46%から上昇ペースはさほど変わらないものの、依然としてサービスインフレの頑固さが感じられます。

住居費が前月比+0.4%とまずまずな結果であったものの、医療サービスは+0.6%と前回の-0.1%から上昇に転じ、また、輸送サービスが+1.5%と伸びを加速(+1.0%→+1.4%→+1.5%)させたことでサービス価格の上昇につながりました。

また、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、コアサービス価格から住居費を除いた通称スーパーコアの数値に特に注目しています。前月比は、+0.65%と前回2月の+0.47%から上昇しました。2月の発表時には、前々回の+0.85%から+0.47%に伸びが急減速したため、市場ではポジティブな材料と見なされていました。しかし、今回再び上昇率が加速しており、想定以上にコアインフレが根強いことを感じさせます(図表4)。前年比ベースでも+4.8%を記録し上昇傾向が見られます(図表5)。

【図表4】各種コアCPI(前月比)の推移
出所: Bloombergよりマネックス証券作成
【図表5】各種コアCPI(前年比)の推移
出所: Bloombergよりマネックス証券作成

【3】所感:根強いインフレに利下げ観測後退

指標発表後市場の反応は、結果が市場予想を上振れたことで、早期利下げ観測が後退し米金利は急上昇しました。米金利が上昇し日米の金利差が拡大したことから為替は米ドル高・円安方向に動き、1ドル152円を突破し、一時153円台に到達しました。株式市場も金利上昇を受け、反落となりました。

パウエルFRB議長は、インフレ率2%までの道のりは「でこぼこ」な道をたどるものだと述べており、1,2月のデータはどこかノイズかのように扱うそぶりで全体像は変わらないとの認識を示していましたが、今回3ヶ月連続で市場予想を上回る結果となったことで、やや景色が変わりつつあります。

また、同日に公表された3月のFOMC議事要旨では、参加者が総じて「最近のデータはインフレが持続的に2%に向かって低下するという確信を強めるものではない」という見解を示したことが明らかになりました。今回の米CPIの結果も全くインフレ鈍化の「確信を強める」内容ではなく、「利下げを急がない」スタンスをさらに強化していくことになりそうです。

とはいえ、FRBは政策判断において、米CPIではなく米個人消費支出(PCE)をインフレ目標として採用しています。米CPIと米PCEでは構成要素の比重が異なるため(図表6)、4月末公表のPCEの結果はまた異なる結果となる可能性があります。

米PCEの結果を予測するには、米CPIだけでは不十分であり、米PCEの算出に用いられる米生産者物価指数(PPI)も確認する必要があります。米PPIは4月11日21:30(日本時間)公表予定です。

【図表6】米CPIとPCEの構成要素割合の比較
出所: Bloombergよりマネックス証券作成

フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐