◆今日から確定申告期間が始まる。領収書の束を前に、毎年のことながら、もっと早くから準備しておけばよかったと後悔する。小学校の夏休みの宿題もそうだった。三つ子の魂百までである。なぜ早くから着手できないのか。それはやはり、税金を払うということが、夏休みの宿題同様、楽しいことではないからだろう。そんな楽しくない税金の支払いに、「お楽しみ」の要素を加えた制度がある。「ふるさと納税」である。

◆正確には自治体への寄附金となる。個人が2千円を超える寄附をすると、住民税のおよそ1割程度が還付・控除される制度だ。実質的に納めている県民税・市民税の一部を移転することになる。「ふるさと納税」が人気なのは、寄付をするとお礼としてその地方の特産品がもらえるからだ。例えば、果物や肉、エビやカニ、お酒など。工芸品や温泉旅館の招待券、スキー場のリフト券などもある。なぜ特産品なのかはわからないがパソコンや電子炊飯器などの電化製品まである。

◆「ふるさと納税」と言いながら、寄付する先は自分の故郷でなくてもよい。そうなると、ますます特産品の好みやお得感で「納税」先を選ぶようになる。どうせ税金で取られるなら、美味しいものをもらったほうがいいという発想があるのだろう。さらに言えば、日本人はいまだに「税は納めるもの」だと考えている。お上(かみ)に納めるものだから、少しでも取り返したいと思うのだろう。

◆日本語では「納税者(正確には納税義務者)」という。英語では「Tax Payer」、文字通り税金をペイする(支払う)人だ。ただ、この英語のPayは、単におカネを渡すのではなく、対価として支払うという意味である。日本語の会話でも、「それってペイするの?」と使われるように、払ったおカネが財やサービスに見合っているか、バランスがとれているかという観点がある。

◆われわれは居住する地域の公共サービス(ごみの収集や上下水道、公園の管理整備など)の恩恵を受けている。公共サービスを受けながら、本来居住地域に払う税金を他の都市に特産品目当てで回すというのは税というものの趣旨から逸れている。公共サービスの質やありかたを評価することが、税の使われ方として適切か、ペイしているかを測ることになる。まず、それを考えよう。自分の税金をブランド牛肉に換えるのは、その後でいい。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆