◆前回の小欄でピケティ氏の講演はプラチナチケットだと述べたが、正真正銘のプラチナチケットはスーパーボウルのチケットだろう。なにしろFBIは「スーパーボウルのチケットが当たりました」というニセ情報で指名手配の犯人を毎年何人も逮捕しているくらいだ。アメリカンフットボールの頂点を決めるスーパーボウルは全米が熱狂するプロスポーツの祭典である。

◆僕はボストンに本拠を置く運用会社で働いていた縁で、ニューイングランド・ペイトリオッツのファンになった。本社の米国人とペイトリオッツの話題でよく盛り上がったものだ。いまやNFLを代表する名QBとなったトム・ブレイディが彗星のごとく現れて、そこからペイトリオッツの大躍進が始まった。昨日のことのように覚えているが、もう15年も昔の話。さすがに引退もささやかれるブレイディ率いるペイトリオッツが今年もまたスーパーボウルで覇を争う。

◆しかし、今年のスーパーボウル、ペイトリオッツにとっては逆風が多い。まずアリゾナ州グレンデールという場所が鬼門だ。同じグレンデールで開催された08年の第42回大会では、ジャイアンツに14-17で惜敗。レギュラーシーズンで16戦全勝を飾りながら唯一の取りこぼしがスーパーボウルの大一番だった。他にも悩ましい件がある。AFCのプレーオフ決勝で、ペイトリオッツの用意したボールの空気圧が規定を下回っていた疑惑が浮上した。メディアの追及も熱を帯びており、選手がナーバスにならなければよいが。

◆もっと強い逆風はウォール街からの「ペイトリオッツ、負けてくれ」コールだろう。というのは、NFCのチームがスーパーボウルを制した年は米国株が上昇するというジンクスがあるからだ。前身のNFL・AFL時代も含め、NFCチームは48回中26回優勝しているが、その年のNYダウは22勝4敗。85%の勝率である。今年に入って米国株は冴えない展開が続いているだけに、市場関係者はほぼ全員がシアトル・シーホークスの応援にまわるだろう。このコラムが「マーケットメール朝刊」で読者に届くころ、第49回スーパーボウルの幕が切って落とされる。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆