モトリーフール米国本社、 2024年3月3日 投稿記事より
アーク社の資金、半導体メーカーからAI銘柄へ
キャシー・ウッド氏は、破壊的イノベーションに焦点を当てた資産運用会社であるアーク・インベストメント・マネジメント(以下、アーク社)の創業者であり、最高投資責任者(CIO)でもあります。同社は、人工知能(AI)などの急成長テクノロジーを中心に構成される、いくつかのテーマ別インデックスファンドを運用していますが、2月にはエヌビディア[NVDA]株を売却し、ポジションを縮小しました。
エヌビディアの画像処理装置(GPU)がAIインフラの代名詞であることを考えると、これは不可解な動きにも見えます。しかし、エヌビディアの株価はこの1年間に236%上昇しているため、アーク社は利益を確定し、売却代金を別のAI銘柄に再投資しているのです。例えば、アーク社は2月にソーシャルメディア企業のピンタレスト[PINS]株を買い増しました。ピンタレストは現在、アーク社の140億ドルに上るポートフォリオの1%強を占めています。
以下では、ピンタレストについて詳しく説明します。
精彩欠いた第4四半期決算
ピンタレストの2023年第4四半期決算は、強弱混在の内容でした。全世界の月間アクティブユーザー数(MAU)は前年同期比11%増の4億9,800万人、ユーザー1人当たり平均売上高(ARPU)は同2%増の2.00ドルでした。MAUの伸び率はウォール街のアナリスト予想をやや上回りましたが、ARPUの伸び率はアナリスト予想をやや下回りました。
これらの結果、売上高は同12%増の9億8,100万ドルとなり、アナリスト予想の9億9,100万ドルに届きませんでした。一方で、効果的なコスト管理が成果を上げ、利益はアナリスト予想を上回りました。GAAPベースの純利益は2億100万ドルとなり、前年同期の1,700万ドルから大幅に増加しました。
決算発表を受けて、ピンタレストの株価は約10%下落し、2021年初頭に付けた過去最高値を依然として60%も下回っています。しかし、同社はAIに投資し、サードパーティーの広告主と提携するなど、賢明な成長戦略を取っています。こうした動きは、今後数年間で忍耐強い株主に価値をもたらしてくれるかもしれません。
AI活用、賢明な成長戦略
ピンタレストが運営するソーシャルメディアプラットフォームでは、ユーザーがさまざまな動画コンテンツを検索、収集・整理し、新しい商品やアイデアを発見することができます。月間ユーザー数はメタ・プラットフォームズ[META]のFacebookやInstagram、バイトダンスのTikTok、スナップ[SNAP]のSnapchatには及びませんが、ピンタレストは世界の大手アドテック企業上位15社に入っています。これは、消費者データを収集し、買い物の意思決定に影響を与えることができるピンタレストの能力の賜物であり、AIへの継続的な投資がそれを可能にしています。
第1四半期に、ピンタレストのビル・レディCEOは次のように語りました。
約1年前、われわれは次世代AI機能への移行を開始し、推奨モデルを以前よりも100倍拡張することができました。われわれは、ファーストパーティの独自データに、AIを搭載した弊社のコンピュータービジョンや検索技術を組み合わせることにより、お勧めする関連ピンの認識された関連性を向上させており、関連性は94%と、1年前から10%ポイント近く上昇しています
同社は第4四半期に、ユーザーが検索の的を絞り込み、簡単に購入行動を起こせるように、生成AIを活用した検索ガイドを導入しました。また、ユーザーのために自動的にコンテンツを整理してくれる、AIを活用した整理機能も新たに追加しました。経営陣は、これらのイノベーションが大きな弾みになるとみています。例えば、ユーザーのエンゲージメントが向上すれば、そこで収集したデータが同社の機械学習モデルに投入され、お勧め機能の性能も向上します。
AIによるイノベーションに加え、ピンタレストはアマゾン・ドットコム[AMZN]やアルファベット[GOOGL]のグーグルと提携し、自社のプラットフォーム上にサードパーティー広告を導入しています。具体的には、ピンタレストの検索画面やホームフィードに、米国内ではアマゾン・ドットコムの広告が、米国以外の市場ではグーグルの広告が掲載されます。こうした提携により、ピンタレストは自社のエコシステム外の広告需要を取り込めるようになりました。特にアマゾン・ドットコムとの提携では、ユーザーがピンタレストのプラットフォーム上で見た商品を、簡単に購入できるようになります。
アナリスト予想は年率15%成長
調査会社グランド・ビュー・リサーチによると、デジタル広告支出は2030年にかけて年率15%で成長すると予想されています。ピンタレストの成長スピードは、広告主の需要を喚起できるかどうかにかかっており、さらにそれは、関連性の高いコンテンツでユーザーを引き付け、広告主であるブランドにとって望ましい結果をもたらすことができるかどうかにかかっています。
この点に関して、経営陣は市場シェア拡大につながり得る賢明な決断を下していると言えます。ウォール街の予想では、ピンタレストの売上高は今後5年間で年率15%の成長が見込まれていますが、市場シェアが実際に拡大すれば、この成長予想には上振れの余地があります。いずれにせよ、足元の株価売上高倍率(PSR)8.2倍は妥当な水準と思われます。
注意点として、ピンタレストは、他のソーシャルネットワークとの厳しい競争に直面しており、人気の高い大手のソーシャルネットワークは、ピンタレストのプラットフォームから広告収入を奪い取る可能性があります。とはいえ、ピンタレストと異なり、これらの競合プラットフォームは商品を発見することを目的としたものではありません。
言い換えれば、ピンタレストは間違いなく劣勢ですが、ソーシャルコマースを促進する独自の強みを持っています。この可能性を活かすことで、ピンタレストは株主に大きな価値をもたらしてくれるかもしれません。こうしたリスクを許容できるなら、ピンタレストには投資する価値があると思われます。配分比率としては、アーク社の戦略に倣い、ポートフォリオ全体の1%程度が適切かもしれません。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。フェイスブックの元市場開発担当ディレクター兼スポークスマンであり、メタ・プラットフォームズのMark Zuckerberg CEOの姉であるRandi Zuckerbergは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Trevor Jennewineは、アマゾン・ドットコム、エヌビディア、ピンタレストの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアルファベット、アマゾン・ドットコム、メタ・プラットフォームズ、エヌビディア、ピンタレストの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。