モトリーフール米国本社、2024年2月13日 投稿記事より

ファーウェイ台頭、中国で苦戦

どれほど大きな企業でもリスクに直面することはあり、アップル[AAPL]も例外ではありません。消費者向けテクノロジーの巨人は、現在、複数の困難に直面しています。

アップルにとって最も明らかなリスクは中国事業です。実際に2023年10-12月期の中華圏からの売上高は、前年同期比で13%減少しました。

パンデミックによるロックダウンから脱却して以降、中国の消費者は慎重になっており、中国経済は期待されたほど急速に成長していません。一方で、ここ数年間に米中間の緊張が高まり、中国の消費者が自国ブランドに目を向け始めたことは、一部の米国企業にとって逆風となっています。

中国では華為技術(ファーウェイ)製スマートフォンの「Mate 60 Pro」が大ヒットしており、アップルのiPhoneは厳しい環境に直面しています。ファーウェイをはじめとする中国企業はかつて、米国の制裁により、5G接続に必要な半導体の入手に苦労しており、アップルにとっては中国市場での競争優位性となっていました。ところが、ファーウェイは5Gチップの自社開発に成功し、中国の半導体ファウンドリである中芯国際集成電路製造(SMIC)が製造しています。他にも、XiaomiやOppoといった中国企業が低価格のスマートフォンを次々と発売しています。

ファーウェイの死角突くのも可能だが

中国での苦戦はアップルのビジネスモデルにとって最大の脅威に見えるかもしれませんが、実は最大のリスクではありません。というのは、ファーウェイは先日、スマートフォンの生産を減速して、人工知能(AI)対応チップの生産に注力することを決めたのです。AIチップに注力するファーウェイが、5Gチップの需要を満たせるかには疑問の余地があります。中国の競合企業が部品調達で制約を受ける中、アップルがイノベーションを起こせば、中国のスマートフォン市場でリーダーに返り咲く可能性があります。

米でアプリ価格めぐり訴訟リスク

米国ではアプリストアのApp Storeに関して、法的問題に直面しています。最近まで、アップルはアプリ開発者に自社の決済システムを利用させ、すべてのアプリ購入やアプリ内課金に対して30%(小規模開発者は15%)の手数料を徴収していました。これに反発して人気ゲーム『Fortnite』を開発したエピック・ゲームズがアップルを相手に訴訟を起こし、最終的に勝訴したのです。ところが、アップルは、アプリ開発者が外部の決済システムを利用することを認める代わりに、同社のプラットフォームを利用するだけで27%の手数料(小規模開発者は12%)を徴収することにしました。

このようなアプリ価格の上昇につながる方針について、2月初め、連邦裁判所判事がアップルに対する集団訴訟を認定しました。App Storeで10ドル以上を支払ったユーザーが、アップルを訴えることを認めたのです。

さらに、ブルームバーグの報道によると、米司法省は反競争的行為の疑いで、アップルに対する反トラスト法訴訟を検討している模様です。報道は、早ければ3月にも提訴される可能性があると伝えています。提訴の内容はまだ明らかにされていませんが、App Storeの閉鎖的なエコシステムと手数料が焦点になると思われます。

App Storeを含むサービス部門は、アップルにとって重要な成長領域です。10-12月期のサービス収入は前年同期比11%増加しました。また、サービス部門の粗利益率は約73%であり、ハードウェア部門の39%を大きく上回ります。このため、サービス部門への打撃はアップルのリスクとなります。

実は小売りより少ない手数料

とはいえ、このリスクもそれほど大きくはないようです。アップルはすでに1件の判決を回避していますし、サードパーティ製品を販売する際に手数料を徴収するのは、アップルのアプリストアに限ったやり方ではありません。小売店は調達価格に一定程度のマージンを上乗せします。例えば、ロク[ROKU]は自社のストリーミングTV用システムを通じたサブスクリプション契約で手数料を取っていますし、イーベイ[EBAY]も自社のオークションを通じて売れた商品に対して手数料を徴収しています。

法廷闘争は予断を許しませんが、アップルがApp Storeを通じて消費者を苦しめていることを証明するのは難しいかもしれません。同社が請求する手数料は多くの小売店が得ている利幅よりも小さいのです。小売り企業の粗利益率を見れば明らかです。例えば、百貨店チェーンのコールズ[KSS]やメーシーズ[M]の粗利益率は通常、40%前後です。

欧州ではApp Storeの手数料を引き下げ

アップルはこれまで、米国ではApp Storeの手数料引き下げをほぼ回避してきましたが、EUではそううまくはいかないでしょう。EUでデジタル市場法が成立した結果、アップルはウェブブラウザのSafariとApp Storeでの大幅な変更を発表しました。中でも重要なのは、自社プラットフォーム上でのアプリ購入に課す手数料の引き下げです。EUでは2024年3月から、手数料が30%(小規模開発者は15%)から17%(小規模開発者は10%)に引き下げられます。また、ユーザーはApp Store以外のアプリストアからアプリをダウンロードできるようになります。

この変更は、アップルのEU内でのApp Store関連収入に直接的な影響を及ぼします。ただ、App Store売上全体のうちEUはわずか7%程度に過ぎません。逆風は弱く、他の分野で克服できます。

しかし、これはアップルが直面する最も重要なリスクと、密接に結びついています。

最大のリスクは技術革新のかげり

最近のアップルは、スティーブ・ジョブズ前CEOの下での成長やイノベーションを遂げていません。実際に、最近の成長は精彩を欠いています。2023年10-12月期の売上高は前年同期比でわずか2%増にとどまり、2023年9月期の通期売上高は前年比で3%近く減少しました。一方で、株価収益率(PER)は、ジョブズ氏が亡くなった2011年末時点と比べて3倍に膨らんでいます。2011年当時と比べて、アップルの事業価値は果たして3倍に増加しているでしょうか。

アップルの拡張現実(AR)ヘッドセット「Pro Vision」は当初の話題性は高かったものの、3,500ドルという価格を考えると、大衆向け製品とは言えません。同製品はアップルにとって、10年近く前のApple Watch以来の大型の新製品投入でした。対照的に、サムスン電子はスマートフォンに、いち早く、折り畳み式など新たなテクノロジーやスタイルを取り入れています。

生成AIがテクノロジー業界に変革をもたらしつつある中、アップルは遅れないようにすることに精一杯で、かつ、自らが破壊の危機にさらされていることに気づくことになるかもしれません。アップルは、もはや以前のような革新的企業ではなくなっています。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Geoffrey Seilerは、記載されているどの企業の株式も保有していません。モトリーフール米国本社は、アップル、ロクの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は、イーベイの株式、および以下のオプションを推奨しています。イーベイの2024年4月満期の45ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。