◆5月20日から始めたこのコラム「新潮流」も今日で25回目。5営業日×5週間でちょうど1か月が経った。何気なく、思いつくまま始めたが、やってみてわかったのは、これ、結構キツイということである。

◆第1回に掲げた理想が早くも崩れている。字数が日増しに増えているのだ。そもそも、この連載を始めたのは僕のストラテジーレポートの正反対のスタイルのものを読者に届けようと思ったからである。ストラテジーレポートは分量が長く更新頻度が少ない。反対に「新潮流」は短く毎日書く。新聞の1面コラムと同等の600文字程度を目安としたはずが...。

◆「時間がなかったので長文になりました」とは哲学者パスカルの言葉。長い文章を書くのは苦労が要らない。文章を長いまま放置するのは怠慢である。もっと時間をかけて練って、短い文章にする努力を怠ってはならない。

◆芥川賞作家の磯崎憲一郎氏がある対談で語っている。「この小説で言いたかったことは何か?」と聞かれて、簡単に答えられるのならば、それを一行で書けばいい。ジミー・ペイジのギターソロは20分くらい続いたりするが、その20分を体験することで生まれてくるものがある。(中略)小説も、その分量を読むという行為を通してしか生まれえないものがあるはずだ、と。

◆長い文章には、文章が長い必然性があり、短い文章には短いならではの機知がある。また両者それぞれに欠点もある。これを「一長一短」という(ウソです)。長文、短文、使い分けて、読者に喜ばれる情報発信をしていきたい。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆