先週の振り返り=米ドル高から米ドル安へ転換の理由は? 

米ドル/円、151.9円から150円を割り込む展開に

先週の米ドル/円は、151.9円という2022年以降の米ドル高値に肉迫するスタートとなったものの、その後は米ドル下落に転換。11月17日(金)にはこのところサポートされてきた150円を割り込む展開となりました(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2023年9月~)
出所:マネックストレーダーFX

先週はなぜ米ドル高から米ドル安に転換したのか。それには主に2つの要因が考えられるのではないでしょうか。1つは米金利が下がりやすくなっているということ、そしてもう1つは大きく米ドル買いに傾斜したポジションの手仕舞い、つまり米ドル売りも入りやすくなっている可能性があるということです。

米金利や為替は景気指標に過敏に反応している可能性

以下に先週の主な米経済指標の発表をまとめてみました。この中で、11月14日の米10月CPI(消費者物価指数)が予想より弱い結果となると、米金利は大きく低下し、それに連れる形で米ドルも大きく売られました。

【先週の主な米経済指標の予想と結果】
11月14日:10月CPI総合=前回3.7%、予想3.3%、結果3.2%
11月15日:10月PPI総合=前回2.2%、予想1.8%、結果1.3%
10月小売売上高=前回0.7%、予想-0.4%、結果-0.1%
10月NY連銀製造業景気指数=前回-4.6、予想-2、結果9.1
11月16日:10月フィラデルフィア連銀景況指数=前回-9、予想-11.5、結果-5.9
10月鉱工業生産指数=前回0.3%、予想-0.3%、結果-0.6%
新規失業保険申請件数=前回21.7万件、予想21.9万件、結果23.1万件

まず興味深かったのは11月15日の動きだったかもしれません。米10月PPI(生産者物価指数)は予想より弱く、瞬間的に米ドルは売られました。ただ、ほぼ同じタイミングで発表された小売売上高や「エンパイア指数」とも呼ばれるNY連銀製造業景気指数が予想より強い結果となると、米ドルは反発に転じたのでした。これは、為替や金利が、インフレ指標より景気指標に過敏に反応するようになっている可能性を感じさせたでしょう。

米金利や為替、景気指標の「弱い結果」に反応か

その上で、11月16日の米経済指標発表と為替、金利の反応も興味深く感じられるものでした。この日発表された通称「フィラー」、フィラデルフィア連銀景況指数は予想より強い結果となったものの、鉱工業生産指数や失業保険申請件数は予想より弱い結果となりました。こうした中で、この日の米金利と米ドルは下落したのでした。

この16日の金融市場の動きは、米景気指標が強弱に分かれた場合、金利や為替は予想より弱い結果に反応したということではないでしょうか。以上を整理すると、金融市場は、米インフレ指標より景気指標を注目し、その上で景気指標も弱い結果に過敏に反応するようになっているのかもしれません。

その背景にあるのは、テクニカルな理由ではないでしょうか。このレポートでも指摘してきたように、米金利、例えば10年債利回りが5%まで上昇した動きは、90日MA(移動平均線)を2割近く上回るもので、それは経験的には短期的な「上がり過ぎ」懸念が強いことを示すものでした(図表2参照)。

【図表2】米10年債利回りの90日MAかい離率(2010年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

短期的な「上がり過ぎ」の修正は、経験的には90日MAを5~10%を下回るまで金利低下が短期的に続くというものなので、その意味では米10年債利回りはさらに4%を目指し低下する可能性があります。だからこそ、米景気の減速を示す結果に反応しやすかったということではないでしょうか。

感謝祭を控え、米ドル買いに傾斜したポジションの手仕舞いから米ドル下落

そして11月17日(金)、米ドル/円はこのところサポートされてきた150円を割れると一時は149円割れ近くまで比較的大きく下落しました。この日は、特段注目される米ドル売り材料はなかったようです。それにもかかわらず米ドルが比較的大きく下落した理由は、米感謝祭の休日を控え、米ドル買いポジションの調整が入りやすかったからという説明が基本のようです。

確かに一部のデータを見ると、先週までの米ドル買い・円売りは、少なくとも2022年以降では最大に拡大していました(図表3参照)。このようなポシションを米ドル売り・円買いで手仕舞う、それが週末にかけて米ドル下落拡大のもう1つの要因だった可能性はあるでしょう。

【図表3】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

今週の注目点=米ドル下落は拡大するか

米金利がさらに下がる可能性があるということ、そして年末が近づく中で米ドル買い・円売りに大きく傾斜したポジションの損益確定が増える可能性があるということは、基本的には米ドルの上値を抑制し、下落を後押しするでしょう。

そうしたことを踏まえると、今週の米ドル/円は上値が抑制され、下落リスクを意識する必要があるのではないでしょうか。今週の米ドル/円の予想レンジは148~151円中心で想定したいと思います。