日米金利差は拡大基調。日本の為替市場への牽制発言が意味すること

米ドル/円相場はすっかり値動きが小さくなってしまいました。米国の長期金利は4.9%台へ上昇し、5%目前。日本の長期金利も上昇基調にはありますが、0.8%台で変動幅は米金利より小さく、日米金利差は拡大基調にあります。しかし、米ドル/円相場の上値は150円大台をキャップに頭を抑えられています。

世界展開しているFXブローカーの個人投資家のポジションを見ると、米ドル/円のロングポジションの比率が大きく、日本のFXブローカーの個人投資家のポジションは米ドル/円ショートが積み上がっている、というのが興味深いところです。海外投資家は日米金利差拡大での米ドル/円相場上昇の流れを継続する「トレンドフォロー」であるのに対し、日本の投資家は「逆張り」です。このトレンドがそろそろ終焉すると考えているのです。

その背景に、連日繰り出される日本の通貨当局者からの為替市場への牽制発言があります。日本の投資家は、為替介入に対する警戒感や為替介入が入ることに対する期待値が高いのでしょう。

米ドル/円の上値が抑えられている要因とは

10月3日、米国の経済指標の1つであるJOLT(求人件数)が予想を上回る好結果となったことで、150円台に乗せて大きく上昇した米ドル/円相場ですが、その直後に147円台へと3円弱急落する瞬間がありました。急落は一瞬で、その後また上昇し149円台を回復、再び150円大台を窺う展開となっていますが、この時為替介入があった可能性が指摘されています。

ただ、2022年9月と10月に実施された為替介入とは値動きが異なるため、為替介入ではないだろうと言う指摘もあります。これは10月末に財務省から発表される「外国為替平衡操作の実施状況」を確認するまではわかりませんが、以降150円から上のレベルへの上昇に対して警戒が強まっていますので、あれが覆面の為替介入だったとするならば、一定の効果がみられるとも言えます。これだけの米金利上昇でも上値が限定的であることがその証でしょう。

もう1つ、10月30~31日の日銀の金融政策決定会合での政策の修正(変更)、あるいは近く変更するための地ならしがあるとの観測が広がっていることも米ドル/円の上値を抑えていると考えられます。

日銀は2023年度の物価見通しを上方修正する方向で検討に入ったと大きく報じられています。2023年度の物価見通しは、前年度比上昇率3%付近となる公算が大きくなっています。さらに2024年度見通しも上方修正される可能性があります。日銀が大規模緩和政策を継続しているのはインフレ目標達成のためですが、日銀自身がそれを確認するのであれば、いよいよ大規模緩和政策からの脱却が近いと考えられます。

日銀の金融政策はどう動くか、今後の方向性に注目

そして、10月の日銀会合ではイールドカーブ・コントロール(YCC)政策の解除、長期金利変動幅のさらなる拡大(1.5%との見方もあります)、マイナス金利の解除、今回マイナス金利の解除はなくても年内解除のための地ならしとしてフォワードガイダンスの修正がある、など様々な観測が飛び交っています。この日銀の金融政策の大転換は米ドル/円相場のトレンド転換となる、と考える投資家が日本国内には多いということだと思います。

いずれにしても、このところ米ドル/円の1日の変動幅が1円程度に縮小し、ボラティリティが小さくなっていますので、サプライズがあれば大きく動き出す可能性は大きいでしょう。期待が盛り上がったにも関わらず(日銀会合に向けて米ドル/円が下がっていた場合)、日銀が動かなかったという期待ハズレの方向でもサプライズとなるかもしれません。日銀会合イベントの価格の急変動には注意しておきたいところです。