◆車の中ではラジオを聴くことが多い。土曜日の午後、FM東京のカウントダウン番組を聴いていたら、6位がテイラー・スウィフトの「Welcome To New York」、5位がアウル・シティfeaturing SEKAI NO OWARI「TOKYO」だった。ニューヨークより東京のほうが、順位が上だ。今の金融市場の注目度みたいだと思った。
◆僕は常々、米国が世界経済の中心であり、さらにニューヨークが世界の金融の中心であると述べてきた。基本的にそれは変わらないけれど、10月末からのこの半月は日本が世界の耳目を集めてきた。日銀の追加緩和でサプライズを誘ったかと思えば、消費増税先送り、衆院の年内解散、年内総選挙と息つく暇もない。これらの動きを受けて日経平均、ドル円とも7年ぶりの水準に駆け上がった。
◆このまま年末まで上昇相場が続けば3年連続の年末ラリーである。一昨年の12年は言うまでもなくアベノミクス相場がスタート。昨年はそれまでおよそ半年に及んだ保ち合いを、米国指標の改善をきっかけに11月から上に放れはじめた。相場は11月から動き出す。株を買うならハロウィーンの頃が最適。まさにハロウィーン効果を実感させるような展開になっている。
◆このところ激しく動いた日本株相場も、今週一連のイベントが終われば目先材料出尽くしとなるだろう。一時的だろうが久しぶりに「Buy On Rumor, Sell On Fact (噂で買って事実で売る)」という展開が見られるか。 11月もあと2週間で終る。東京ではハロウィーンが終わったらすぐにクリスマス・モードに入っているが、米国でも感謝祭(サンクスギビング)が終わればクリスマスへ向けて年末商戦の火ぶたが切って落とされる。米国の消費関連データが再び注目を集めよう。主役の座はまた米国に戻るだろう。
◆しかし、日本と米国、東京とニューヨーク、どちらが世界の中心か、なんて言っても意味がない。今やモンスター・ポップ・ユニットになったSEKAI NO OWARIのニューシングルはオランダの人気DJ、ニッキー・ロメロがプロデュース。冒頭の「TOKYO」は米国のミュージシャン、アウル・シティことアダム・ヤングとのコラボレーションである。SEKAI NO OWARIは国境を超えている。これぞ、現代の若者の感覚だろう。彼らは「TOKYO」でこう歌う。<僕は月の光を送る/君は夕日を見る/海の先の/TOKYOに/僕がいるときに>。世界の金融市場は、この歌詞の通り、ずいぶん前からグローバルでひとつになっている。SEKAI NO OWARIのずっと前から。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆